海外コメンタリー

「ムーアの法則」限界説飛び交う中、プロセッサ高速化への道を模索するチップメーカー - (page 5)

John Morris (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-10-31 06:30

 IBMによると、NVLinkを搭載したPOWER8サーバは、PCIe Gen3を使用してアクセラレータ(「NVIDIA DGX-1」など)に接続する標準的な「Xeon」サーバや「Opteron」サーバに比べると、パフォーマンスが5倍向上しているという(この構成を採用した「IBM Power System S822LC for High Performance Computing」という2Uサーバが最近発表されたばかりだ)。同社は、POWER9サーバがBlueLink上のNVLink 2.0を採用することで、7倍高速になると述べているものの、POWER9が利用可能になる2017年後半には、Intelも新プロセッサとしてXeon E5やXeon E7を市場に投入しているはずだ。

 IBMのPOWER9は、既にスーパーコンピュータ市場で2つの大きな勝利を手にしている。米オークリッジ国立研究所で建造中のスーパーコンピュータシステム「Summit」は、およそ3400のノードで構成され、各ノードはNVLinkで接続された複数のPOWER9プロセッサと複数のGPU(次世代版Tesla)、そして500Gバイトの高帯域幅DDR4メモリ、800Gバイトの不揮発性メモリで構成されている。このシステムはピーク時のパフォーマンスがおよそ200ペタFLOPSにも達すると見込まれている。また、米ローレンス・リバモア研究所も「Sierra」システムを建造中であり、あまり多くを語っていないものの、POWER9と次世代版Teslaを採用し、メモリを合計で2.0〜2.4ペタバイト搭載することで、150ペタFLOPSの処理性能を実現しようとしている。どちらのシステムも2017〜2018年に稼働が開始する見込みだ。

 OpenPOWERのメンバー企業であり、既にPOWER8サーバをデータセンターの一部で使用しているGoogleは、Rackspaceと協力し、19インチの標準ラックに収納できる、24コア(SMT4)のスケールアウト版POWER9プロセッサを2基搭載した「Zaius」というラックサーバを開発中だ。他の企業もこのオープン設計に基づくPOWER9サーバを開発することになるだろう。また中国のPowerCore Technology(中晟宏芯信息科技)といったチップ企業は、10nmプロセスや7nmプロセスを採用した独自のPOWERプロセッサを設計している。これらのプロセッサは、2018〜2019年頃から利用できるようになるはずだ。

メモリというボトルネックの解消

 システムのパフォーマンスを向上させるうえでの最大のボトルネックを1つ挙げるとすれば、それはメモリとなる。メモリ関連にイノベーションが集中しているのは、こういった理由があるためだ。デスクトップPCやサーバのシステムメモリはDDR4へと移行したが、それ以降のロードマップはまだ明らかになっていない。DDR5はまだ規格として策定中の段階であるため、2018年か2019年まで商品化されることはないだろう。

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