本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、IIJの勝栄二郎 代表取締役社長と、日本ヒューレット・パッカードの大月剛 執行役員の発言を紹介する。
「セキュリティを意識しなくてよいネットワークを提供したい」 (IIJ 勝栄二郎 代表取締役社長)
IIJの勝栄二郎 代表取締役社長
インターネットイニシアティブ(IIJ)が先ごろ、セキュリティ事業の強化に向けて新ブランド「wizSafe(ウィズセーフ)」を発表した。勝氏の冒頭の発言はその発表会見で、インターネットサービスプロバイダー(ISP)としてのIIJのセキュリティに対する基本的な考え方を述べたものである。
勝氏によると、IIJは1994年に国内初のファイアウォールサービスを開始して以来、国内最大規模のバックボーンネットワークを運用するISPとしての知見を生かし、各種セキュリティサービスを提供してきたという。
そうした中で、「最近になってセキュリティ需要が一段と高まってきた」(勝氏)ことから、今回、セキュリティ事業の新ブランドを立ち上げ、その下に同社のセキュリティサービスをを統合。新たに構築する情報分析基盤を核としたトータルなセキュリティ対策を提供していくとした。
新ブランドのコンセプトは「安全をあたりまえに」。セキュリティが標準で組み込まれたサービスの提供を通して、ユーザーが脅威を意識せずにインターネットを安全に利用できる社会の実現を目指すとしている。この内容を凝縮したのが、勝氏の冒頭の発言である。
IIJのセキュリティ事業の新ブランド
新ブランドの立ち上げとともに強化したセキュリティ事業の内容については関連記事をご覧いただくとして、注目されるのは新たに構築する情報分析基盤である。
これは、バックボーントラフィックやDNS情報をはじめ、ユーザーに提供しているファイアウォールやIPS、メール、ウェブといった各種サービスの膨大なログやイベント情報を収集し分析することで、IIJ独自のセキュリティインテリジェンスを生成する仕組みだ。これにより、これまで個別のサービスの運用監視では検出できなかった脅威や攻撃の兆候を見つけることが可能になるという。
勝氏とともに会見で説明に立った同社の齋藤衛セキュリティ本部長によると、「新たに構築する情報分析基盤は、これまでサービスごとなどに分散して取り組んできた分析作業を一元化するもので、直近3カ月ほどの運用実績では1日あたり70億件程度のデータが分析対象になっている」という。正式なサービス開始は今年12月中旬を予定している。