--競合をリードするための戦略は?
Singh イノベーションだ。ただやみくもな機能開発ではなく、顧客が何を期待しているのか、顧客のニーズは何かという視点でのイノベーションを重視している。
Apple製品を購入する理由は、顧客がそのイノベーションに価値を見出しているから。イノベーションをやめると、顧客も去る。SAPはさまざまな分野で他社よりもイノベーションに投資している。それがリードにつながっている。
グローバル市場では、顧客は自分が欲しいものを選択できる。選ばれるためにはイノベーションを続け、市場で最高の製品を目指す。これはとてもヘルシーな環境で、顧客は大きなメリットがある。
--ビジネスネットワークで顧客の課題は何か?
Singh 最大の課題は認知だ。
顧客と話をしてみると、このような自動化が可能であることを知らなかったという反応がほとんど。このプロセスが自動化できると分かると、どうすればいいのかと聞かれる。顧客からベストプラクティスを教えてほしいとよく頼まれる。
Cherney それだけでなく、われわれの製品を利用する顧客はお互いに助け合っている。LinkedInや製品の中でも、契約をどうするかなどの情報を共有している。日本で開催するConcurのユーザーカンファレンスには約3000社が集い、われわれからだけではなく、他の顧客からも学んでいる。オープンなコミュニティができている。
変化は簡単ではない。顧客が変化を克服するためには、根本的に壊れているビジネスの問題から変化を図る方法が良い。例えば調達プロセスの多くが手作業で、手間もコストもかかっている。顧客が変化を受け入れるにあたって、まず最も痛い部分からスタートする。そこでうまくいくと、次に拡大できる。
顧客は全体のソリューションセットを導入することもできるし、部分的にスタートすることもできる。
--ビジネスネットワークを3分野以外に拡大する計画は?
Singh ヘルスケアは潜在性が大きな分野だ。根本レベルでネットワークの問題がある分野であり、SAPが投資している分野でもある。
ヘルスケアではデータの共有が進んでいない。データの共有はプライバシーを尊重した形で行われる必要があるが、医療サービスを前進させ、ヘルスケアでのイノベーションを加速するためには不可欠だ。
例えば今日のがん治療は、多くの治療プログラムがいわゆる白人男性向けに最適化されている。だが、ゲノムデータがあり、保険データがあり、リサーチや臨床データなどがあり、ヘルスケアIoTデータがあれば、この情報をラボでの薬の実験などに使うことができる。治療を個人向けに最適化できるチャンスだ。
すでにドイツのがん研究所であるCharité University Hospitalと協業している。Chariteはわれわれのプラットフォームの最初のパイロットカスタマーとなり、プラットフォーム上にデータを構築している。
今後20~30年でヘルスケアは大きく変わるだろう。医療を個人に最適化できれば、人々の生活を改善できる。
(左)ビジネスネットワークス・アプリケーショングループ シニアバイスプレジデント、Neil Charney氏、(右)Concur最高経営責任者(CEO)でSAPエグゼクティブボードを務めるSteve Singh氏