SAPは9月29日、イタリアでIoTのイベントを開催した。同社はこの1カ月でIoT関連の買収などを重ねているが、このイベントでは「IoTに今後5年で20億ユーロを投資する」と同社の最高経営責任者(CEO)のBill McDermott氏が発表。Indutrie 4.0に向けて加速モードに入ったことをうかがわせた。
SAPのCEO、Bill McDermott氏(左)とTrenitaliaのCEO、Babara Morgante氏(右) TrenitaliaのSAP IoT導入はトップ自らのコミットがあった。
イベントは「SAP IoT」の正式ローンチとなった。McDermott氏は、統合基幹業務システム(ERP)からHANAでインメモリデータベースに拡大したことについて、「コンシューマー主導のビジネス経済向けのデータベース。モバイル、ソーシャルメディア、クラウドのトレンド、デジタルトランスフォーメーションに対応できる」と説明する。
例えばソーシャルメディアの参加者は年10%で増えており、現在25億人に達している。SAPは既にAriba、Concur、FieldGlassなどの買収を通じて「ビジネスネットワーク」(この日McDermott氏は「インター・エンタープライズコンピューティング」と表現した)として、調達、旅行、派遣社員などで企業間の取引やコラボレーションを可能にしている。
「21世紀のデータベースであるHANA、モダンで先進思考を持つERPシステムと洗練されたビジネスプロセス。業務アプリケーション、エンタープライズアプリケーションを(オンプレミスに加えて)クラウドでも利用でき、取引先とのやりとりできるネットワークもある」とMcDermott氏はSAPの今をまとめた。今回のIoTは、この方向性の延長線にある。
「我々は一歩進めてIoTに拡大する。数年後には500億ものモノが管理されることになる」とMcDermott氏。「そこでSAPは20億ユーロを投資して、企業のIoT戦略強化を支援する」と続けた。IoTでは決して先発ではないが、顧客側の機は熟したとみる。「IoTでもSAPはリードをとる」とMcDermott氏は言う。
SAPは少し前に、IoTソリューションの開発、実装、管理を簡素化するイタリア/シリコンバレーPLAT.ONE、産業向けのダイナミックシュミレーションなどのソフトウェアを開発するノルウェーFedem Technologyの買収を発表しているが、20億ユーロはこのような企業買収に加え、社内のソリューション開発などに注がれる。
SAP IoTの土台となるのは、リアルタイムで大量のデータを処理、ストリームできる同社のPaaS「HANA Cloud Platform」、HANA向けに最適化したERP「SAP S/4 HANA」だ。
最初の大型顧客として、イタリアの鉄道会社Trenitaliaを発表した。Trenitaliaでは列車にセンサをつけ、これによる予測メンテナンスを実施するという。SAP HANAプラットフォーム上でデータを元に故障を事前に予測することで、定期的な全体メンテナンスや支障が起きた後の対応から、必要に応じて事前にメンテナンスすることが可能になる。同社の最高情報責任者、Danilo Gismondi氏は、「メンテナンスコストを8~10%削減できる」と期待を語った。
Trenitaliaが導入を開始している予測メンテナンス「Dynamic Maintenance Management System」