Linuxやオープンソース製品の人気や有用性については誰もが知っているところだろう。ただ、こういった製品を開発し、無償で提供している企業が、どのようにして経営を成り立たせているのか疑問に思っている人もいるはずだ。実のところ、収益を得るためのさまざまな方法があるのだ。
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古いハードウェアを使い続けている企業にとって、Linuxがいかに有効なOSとなるのかを記した筆者の記事は、内容に対する反論が筆者のもとに1通も来なかったという点で新たな記録を打ち立てた。ただ、反論は来なかったというものの、Linuxやオープンソースに関するビジネスについての疑問を投げかける電子メールをたくさん受け取った。
Hermannと名乗る読者は、「Linuxやオープンソースに携わる企業は、優れたソフトウェアを作りながら、それらを無償で提供している。どのようにすれば、このようなことを両立できるのかが分からない」と記している。このコメントは、手頃な出発点となるはずだ。
Hermann氏の疑問はもっともだが、無償のソフトウェアから利益を生み出すための道はたくさんある。
需要と商用ソフトウェア開発の関係
まず、需要という観点からものごとを捉えてみたい。ソフトウェアがより専門的になればなるほど、ユーザーの数は少なくなる。そして一般的には、ユーザーの数が少なくなればなるほど、市場機会も小さくなる。さらに市場機会が小さくなればなるほど、その種のアプリケーション開発に投資しようという企業の数も少なくなる。
実際のところ、商用製品の需要と開発者数との関係をグラフ化すると、釣り鐘型のような曲線となる。需要がほとんどない分野に対して投資しようとする開発者などほとんどいないはずだ。しかしオフィススイートといったアプリケーション分野も、いくつかの大手開発企業が寡占しているため、開発に携わろうとする企業の数はほとんどない状態となる(ただ、アドオン製品がやり取りされる巨大なアフターマーケットがエコシステムとして生み出される傾向はある)。
釣り鐘の中央部は、多岐にわたるニーズに対応するソフトウェアを開発する数多くの商用ソフトウェア企業でにぎわっている。こうした企業のなかには、有効市場(TAM:Total Addressable Market)の規模があまりにも小さいため、高い売上高が見込めないというところもある。しかし、多くのソフトウェア企業が小規模な市場でせめぎ合っている。また、特殊なニーズに対応する小規模市場では、大きな利益を生み出す垂直市場の機会が醸成され、企業は細かいカスタマイズ性やサポートサービスを売りにした高価なソリューションを販売している。
こういった点で、Hermann氏の言っていることは間違っていない。しっかり運営され、高い利益を上げようとするソフトウェア企業は、投資に見合う市場に向けて展開していく必要がある。詰まるところ、企業はオフィスの賃貸料や、従業員の給与や福利厚生費、事業の運営費用をまかなわなければならないうえ、自らの投資に対して相応の見返りを求める投資家を満足させる必要もある。