Marshall McLuhanの「Global Village」ではないけれども、テクノロジの進化と発達によって空間的な障壁が取り払われフラットになるはずであった世界が、ここへきてにわかに地理的な特性/特色を鮮明化させている。
“デジタル技術によって世界はひとつの村のようになる”という良くも悪くもまことしやかに喧伝されていたかつての未来像とはどうやらまったく異なる世界の景観が、いま、にわかに現出しつつあるように思う。

おそらくこれは、“デジタル技術は人間や社会にさほどの影響を及ぼさなかった”ということではなく、むしろ逆に、“デジタル技術が私たちの前に開示しつつあるTACIT FUTURE=暗黙の未来である”と考えるほうが妥当なのではないか。
インターネット黎明期の夢の実現だけが未来の指標/指針ではない。生命的かつ自律的な変異を遂げ始めたインターネットは、今後、私たち人間の予測をやすやすと覆す結果をもたらし続けるだろう。
そうした意味で、「Singularity」(技術的特異点)への素地はもうかなりの程度まで整えられているし、私たちを取り巻く情報世界はその過程の途上にあると言っていい。
未来はいつかやってくる漠然としたものではなく、いま現在ここにある具体的なものである。
- 高橋幸治
- 編集者。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年まで「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに編集長/クリエイティブディレクター/メディアプロデューサーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。「エディターシップの可能性」を探求するミーティングメディア「Editors' Lounge」主宰。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部にて非常勤講師もつとめる。