--具体的にはどのようなユースケースになるのでしょう?
例えばこれは欧州で始まっている検証実験の例ですが、コーヒーメーカーにSIMを入れてそのデータを活用するという例があります。民生品ではなくても、例えば空港のバーの機器にSIMを入れて、いつどういうものが消費されたのかといった情報を集めたり、そこでの利用時間から機器の故障を予測したり、さまざまなものがコネクテッドになることで可能性が広がります。
この事例において特徴的なのは、そういう機器を接続するネットワークはいわゆる通信キャリアのネットワークではなく「MVNO(仮想移動体通信事業者)」のIoTに特化したサービスを使うという部分ですね。実際に非常に少量のデータならわざわざキャリアのサービスを使って受けなくてもいいわけで、そういう意味では日本でKDDIがソラコムのサービスを取り込んで自社サービスとして提供するという事例も、サービスをすばやく立ち上げる施策という意味で参考になります。
これは実際にもう始まっていますが、DaimlerがMercedes-BenzのEクラスにOTのeSIMを搭載し、車両の管理や車内のエンターテイメントに使えるようになっています。これも、IoTの文脈で言えば、接続することでさまざまな価値を提供することの1つの例です。カーエンターテイメントがネットにつながることで、単にコンテンツが見られるというだけではなく、そこで簡単に、かつセキュアにコンテンツが買えるというのも大きな利点です。
--例えば渋滞でグズりだした子供にアニメを見せようとして、サッと検索して買ったらすぐに子供たちに見せられるみたいなことでしょうか?確かにそれをスマートフォンだけでやろうとしたら、せっかくの車内のオーディオやディスプレイが使えないですよね。
他にもオーストラリアでの実証実験の例ですが、自動車のガソリンを入れる時に自分の車のナンバーとクレジットカードをひも付けておいて、ガソリンスタンドでナンバーを画像認識して認証が取れれば、現金やクレジットカードすら使わずにガソリンを入れることができるようになります。
そういう風に、単に接続だけではなくてペイメント機能がセキュアにリンクすることで新しいユーザー体験が現れてきます。ユーザー体験をスムーズにする、摩擦をなくすことが重要だと思っています。
--日本はそんなユースケースを日常的に使えるようになるんでしょうか?おサイフ携帯などでも先行しているとは思いますが。
日本はかなり進んではいますが、いかんせん独自仕様が多い(笑)。ただ、商取引という言う部分ではまだ現金が多いですね。海外から観光客が日本に来ても、現金がおろせないなどの課題があります。米国はまだまだ現金が多いのでキャッシュレスという観点からは遅れていると思います。
欧州では携帯キャリアネットワークを使って送金するなどのビジネスがあります。これはアフリカなどからの移民が、自国の家族に送金する時にSMSなどを使って現金を送ったり、携帯の利用料金を送ったりということがよくあるユースケースだからなんですね。そういうシステムにもわれわれの製品が使われています。
--日本でのビジネスの今後の計画を教えてください。
ApplePayは日本で始まりましたけども、まだ第一段階であると考えていますので、引き続きサポートしていきたいと思っています。またIoTやM2Mのビジネスも引き続き推進します。先ほどのダイムラーの事例のように、日本では高級車以外にもインターネットに接続されていく事例が増えていくだろうと思っています。会社としてわれわれ自身も成長していく予定です。
ただし、グローバル展開していますので、サーバエンジニアを日本で大量に採用するということはないだろうと思います。サーバ関連のエンジニアはポーランドに多数いたり、チップのエンジニアリング拠点としてははジャカルタに大きなものがあります。日本ではお客様のニーズを形にする仕事を担当するフィールドシステムエンジニアのような技術者を増強するつもりです。
(取材者から)クレジットカードが単なるプラスチックのカードではなく、それ自体もプロセッサとメモリ、それにディスプレイまでを備えた次世代型に進化する中で、それらが接続されたソリューションとしてセキュアなペイメントはこれから社会の中に浸透していくだろう。あまり陽の当たらない影の役者としてのOTは、ApplePayをはじめとして色々な部分に貢献していくだろう。1年後にもう一度、インタビューをしてみたい。

MOTION CODEカードは一定時間毎にセキュリティコードが変わることで不正利用が激減するという