WFP国連世界食糧計画(国連WFP)とNECは、地球規模で発生する感染症対策として、供給物資のサプライチェーン構築において連携すると発表。「物流情報管理プラットフォーム」を共同で開発する。
物流情報管理プラットフォームは、防護服やワクチンなどの医療物資を、現地の空港や港から、感染地域に送るために必要とされる物流情報を可視化するIT基盤で、レポーティング機能や既存の物流システムとのデータ連携機能、感染症発生国の倉庫在庫管理機能なども提供する。
国連の食糧支援機関である国連WFPの主導のもと、世界保健機関(WHO)や世界銀行、国連児童基金(ユニセフ)などの国際機関のほか、ヘンリー・シャイン、べクトンディッキンソン・アンド・カンパニー、UPS財団といった民間企業など、17の団体や組織が連携して取り組んでいる「地球規模感染症対策サプライチェーンネットワーク(Global Pandemic Supply Chain Network=PSCネットワーク)」活動の一環で、世界的な感染症が発生した際に、医療や支援活動に必要となる物資の供給/輸送網を構築するのが狙いだ。
これは、2014年に、西アフリカでエボラ出血熱が流行した際、物資が感染地域に迅速に届かずに対策に遅れが生じたことや、倉庫のキャパシティ不足、物資の需要と供給に関する情報不足、国境の閉鎖に伴う感染地域へのアクセス制限、支援の重複や非効率性などの問題を教訓として、2015年の世界経済フォーラム(ダボス会議)での議論をきっかけに、取り組みが開始されたものだ。
国連WFPは、世界最大の人道支援団体であり、国連で随一の物流能力を持つことから、大規模な人道危機が発生した場合には、国連諸機関やNGOの支援物資輸送を先導する役割を担っている。日本政府も、PSCネットワークの取り組みに、100万ドルの資金を拠出。これも、物流情報管理プラットフォームの開発に活用される。
物流情報管理プラットフォームでは、62品目にのぼる緊急人道支援物資の物流や在庫の現状を把握したり、状況を分析することで、物流や在庫などのデータを見える化。さらに、感染症の特定や感染症拡散モデル情報、必要物資計画、供給在庫モニタ、供給計画、生産状況モニタなどのデータなどパートナーが持つ情報も収集。これらのデータをもとに、AIを活用して、緊急人道支援物資のニーズ予測や対応の最適化、緊急人道支援物資ボトルネットの予測と最適化にも取り組んでいく。
NECは、PSCネットワークに参加するアジア初の民間企業であり、参加企業のなかでは、唯一の情報通信企業でもある。
NEC 代表取締役会長の遠藤信博氏
NECの遠藤信博会長は、「NECは、2013年から『Orchestrating a Brighter World』をスローガンにしており、人とコミュニケーションを取ることで、明るく、スマートな世界を作り上げることを目指している。今回の取り組みは、その方向感と一致するものである。NECが提供する価値は、コンピューティングパワー、ネットワーク構築能力、ソフトウェア開発力に長けている点で、この3つの力を持っている企業は、世界的にも少ない。NECは、ICTを活用することで、リアルタイム、ダイナミック、リモートを実現し、これによって、安心、安全、効率、公平に貢献する」などと語る。