IBMはクラウド時代における「イノベーション」段階の到来を見越し、開発者との関係を積極的に拡充してきている。
クラウドコンピューティング分野では10年にわたってAmazon Web Services(AWS)が優位を維持してきているが、IBMはこの市場が転機を迎えようとしていると考えている。
IBMのチーフデベロッパーエバンジェリストであるWillie Tejada氏は米ZDNetに対して、「IBMのゴールはエンタープライズクラウド分野において誰もが認めるリーダーになることだ」と述べている。現時点では、AWSがクラウドインフラ市場のおよそ3分の1のシェアを握っており、GoogleとMicrosoft、IBMのシェアの合計を上回っている。それでもTejada氏は、クラウドコンピューティングが「新たな段階」に突入しており、「規模の競争ではなく、価値の競争になっている」と主張している。
同氏は「クラウド分野はこれまでコストという観点で語られる段階にあり、企業はIT戦略におけるコストの削減と、アジリティや柔軟性を追求するための手段としてクラウドを捉えている」と述べたうえで、「われわれは、次の段階で重視されるのはイノベーションだと確信している」と語っている。
IBMは、企業の意思決定により強い影響力を持つようになってきている開発者らとの連携を強化することで、この段階に備えようとしている。
Tejada氏は「これは、使用する必要のあるツールやプラットフォームに対するアクセシビリティという側面も持っている」と述べるとともに、「開発者が環境を構築したり、システムを入手する場合、社内の誰かとやり取りする必要があったのはそれほど昔の話ではない。しかし今では、世界のほぼどこからでも、しかもほんの数分でスーパーコンピュータにアクセスできるようになっている。開発者コミュニティでは権限の拡大が大きく進行している」と述べている。
IBMはこのコミュニティにリーチするために2016年4月、Digital Business Groupを設立した。Tejada氏と、同社初の最高デジタル責任者(CDO)に就任したBob Lord氏によって率いられるこのグループは、人工知能(AI)やデータ科学の専門知識を有する、新世代の「コグニティブコンピューティングの開発者」を訓練する取り組みに着手している。
「次世代の開発者たちは(中略)、AIに注力する一方で、データ科学そのものからそれほど距離を置かないとわれわれは確信している」(Tejada氏)