ハイブリッド利用はクラウドへ全面移行の「通過点」
それは、企業がクラウドで実現する変革の1つとして挙げた「持たざる戦略で身軽に戦う」の中で、長崎氏が紹介した1枚の絵に集約される。「多くの企業がたどるクラウドの適用ステップ」と題した下の図1がそれだ。この図における同氏の説明は以下の通りである。

図1:ハイブリッドとクラウドの関係を端的に表したAWSのクラウドジャーニー
企業はさまざまなパターンでクラウド化に取り組んでいる。それをAWSでは「クラウドジャーニー」と呼んでいるが、これには4つのステップがある。1つ目はできるところから始める「プロジェクト」、2つ目はオンプレミスとの連携を図った「ハイブリッド」、3つ目はクラウドを前提にした取り組み姿勢の「クラウドファースト」、そして4つ目がクラウドへの「全面移行」だ。
ここで注目したいのは、AWSはこれら4つを「ステップ」と見ていることだ。言い換えれば、ハイブリッド利用はクラウドへ全面移行の「通過点」にしか過ぎないという考え方である。AWSにとってこの見解は以前から一貫しているものだが、図1のように分かりやすい絵を見たのは、筆者の記憶では初めてだ。
ただ、企業のクラウド化については、AWSクラウドの急速な普及によって、一時はクラウドファーストの動きが活発化したものの、最近ではハイブリッド利用が今後の中心になるとの見方が増えているようにも見受けられる。
AWSもこうした傾向を踏まえて、ハイブリッド利用を支援するサービス群(下の図2)を用意しているが、同社の思惑はそうしたサービスからクラウドファースト、そしてクラウドへの全面移行へ導いていくことにある。

図2:ハイブリッド利用を支援するサービス群
長崎氏は2年前のAWS Summitで、「ハイブリッド利用はあくまでも通過点。われわれは、5〜10年後にはほとんどの業務システムがクラウドに移行すると確信している」と述べた。今回はそうした踏み込んだ発言はなかったが、その代わりに「ハイブリッドとクラウドの関係」が一目で分かる図1を示してみせた。筆者も同感である。ただ、この議論はクラウドビジネスの根幹に関わるものと思われるだけに、もっと深めていく必要があるだろう。