八子氏:困っていないところに新しい技術やビジネスモデルを投下しても、「あったら良いよね」で終わってしまいます。

ウフル 専務執行役員 IoTイノベーションセンター所長兼エグゼクティブコンサルタント 八子知礼氏
シェアリングエコノミーも、海外で新興国の人たちが「困っている」とか、都市間が離れていて、乗って行った車に乗って帰るのが面倒くさいから、誰かに乗って帰ってもらうという形のものはあっても構わないのですが、日本はそういう状況では困っていない。
志村さんのコメントのように、あと10年はないと思っています。地方の人たちもお金がなくて困っていると言いながら、現地に行くとまだまだそうでもないとも感じる。
だからライドシェアのような実証実験もいろいろやっているのでしょうが、税金払うからバンバンやってくれと言い始めるのは10年先だろうというところです。
困っていないところにも導入されるのでしょうけど、ビジネスモデルを何も考えていないので、まともに成立しないと思います。
今から30年後に人口が1億人を切ったとして、街の銭湯が成立しなくなったり、高速道路がメンテナンスできなくなったりする。または、データセンターがいっぱいあって困るという話になり、「こんなにたくさんあるんだったら、シェアして使えば」とならないと、シェアエコノミーの方向には行かないのでは。
田舎に行けば行くほど、過疎であればあるほど困っているので、田舎の辺縁部はそういうシェアは少しずつニーズがあるのかもしれませんが、都市部ではまだまだその潮流は見えません。
もしシェアリングエコノミーのビジネスモデルでやるのであれば、グローバルに通用するような規模の大きいシェアビジネスでないと意味がないと思います。
玉川氏:シェアリングエコノミーの考え方自体は、テクノロジがサポートしたと思っています。例えばUberにしても、スマホが行き渡っていて、運転手と利用者を紐付けることで、シェアリングエコノミーという考え方がある意味現実化している。
それはインターネットテクノロジが支えているのです。その仕組みはいろいろなところに適用できると思っていて、まだまだビジネスチャンスはあるのではないかと思っています。
一方で、日本は便利すぎて、例えばタクシーに関しては十分走っているからUberじゃなくていいよねというところがあるので、シェアリングエコノミーという「手段」が具体的なビジネス課題を解くのがなかなかイメージしにくいと思います。