応用事例探索に関する講演
実際に利用できる量子アニーリングマシンが既にある。そのような状況から、量子アニーリングマシンを使った応用事例探索に関する研究が盛んだ。
社会実装へ駒を進める時代に突入したいま、実データを扱っている組織の強みが現れやすい研究領域でもある。一連の情報処理に対し、既存のコンピュータで済ませるべき部分と、量子アニーリングマシンを使うべき部分を適切に切り分ける必要がある。
この発想のもと、トータルとして情報処理性能が高まる応用事例を見出すことが重要である。
NASAのDavide Venturelli氏は、最適化問題を扱う際に使用する計算手法「整数線形計画法」をD-Waveでどのように取り扱うべきかについて伝えた。
D-Waveや類似のイジングマシンを使うためには、解決したい課題をイジングモデルと呼ばれる数理モデルで表現し、それをさらに、イジングマシンのビット間接続のネットワーク構造に即した埋め込みを行う必要がある。
この埋め込みの部分について徹底的に議論したというわけだ。実社会問題の課題解決を行う際、この埋め込み技術のノウハウを徹底的に積み上げていくことが、量子アニーリングマシンの性能を最大限発揮するために必要不可欠である。
またQxBranchのDan D. Padilha氏やリクルートコミュニケーションズの棚橋耕太郎氏により、量子アニーリングマシンを使った、機械学習における特徴量選択に関する発表がなされた。いずれも既存手法に比べ、D-Waveを用いた場合の優位性を示唆する結果が報告された。
超伝導回路による量子ビットを世界で初めて実現した蔡兆申氏(理化学研究所)による招待講演
(東北大学 大関真之氏提供)
さらに、リクルートコミュニケーションズの高柳慎一氏からは、広告配信を最適化するために、量子アニーリングを利用する方法を提案し、D-Waveを用いて解析した。
既存手法に比べて、ウェブサイトに埋め込まれたディスプレイ広告の最適度合いが高まることを確認した。
これらはいずれも量子アニーリングを使った機械学習の高速化を目指した研究開発であり、現在ホットなトピックの一つである。量子アニーリングに対し、リクルートコミュニケーションズの方々が持つ印象については、この記事やこの記事に紹介されている。