こちらでも紹介をしたが、企業の経営層や最高経営責任者(CEO)は、全社的にデジタル化の推進を図るために、方針の明確化とデジタル化を推進する組織を設置する。
そして、企業の情報システム部や業務部門では、IoT・AIなどのさまざまなデジタルテクノロジを積極的に検証して実用化し、第4次産業革命の流れが進む中での、イノベーションを担う組織としての意識づけと行動を進める。これにより、新しい価値創出による収益拡大と競争上の優位性を確立していくことが、ますます重要となっている。
第4次産業革命は、さまざまな産業へのインパクトをもたらしており、各産業分野での導入事例も紹介されている。金融分野では、FinTechの潮流により、AIを活用したサービス提供や実験の取り組みが加速している。
出所:総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)を元に筆者加工
医療分野では、医療ビッグデータにAIが加わり、個別化・層別化医療や創薬への応用が進む。ヒトの有効性や安全性の予測精度が向上し、医療や新薬の適格性の向上が進んでいる。
出所:総務省「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展に係る現状及び課題に関する調査研究」(平成29年)を元に筆者加工
政府では、第4次産業革命は、単なる技術革新にとどまらず、社会全体に変革をもたらし、経済成長にも大きく貢献する可能性を示している。
金融や医療分野の事例でも紹介したように、企業はその可能性を現実のものとするため、各産業分野で、IoT・AIなどのデジタルテクノロジを手段として積極的に活用し、自社の競争力向上や新たなビジネスの創出に大きくつなげていくことが、ますます重要となっていくだろう。
ただ、デジタルテクノロジをやみくもに採用するのではなく、自社のコスト削減やプロセス改善、事業拡大や売上向上などのプロジェクトの目的をした上で、「自社のバリューチェーンのどの部分で活用していくか」を検討していく必要がある。
また、自社に適したIoT・AI関連のソリューションやクラウドサービスの見極めや導入も重要だ。そのためには、IoT・AI関連のエンジニアなどの人材確保や、プロジェクトごとの業務委託、さらには、AI時代の雇用形態や評価制度まで踏み込んだ事業変革へも着手することを検討したい。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。