世界では、AIによるさまざまな経済インパクトや新しいビジネスの創造が期待され、雇用の不安があるものの、雇用の大きな流動により、新しい産業を生み出し、新しい働き方を模索する動きが顕著である。
その一方、日本のマネジメント層は、AIに対しては、仕事が奪われるという意識は低く、労働時間の短縮や業務の効率化などAIの普及よるさまざまなメリットを感じている。
ただ、新しい産業のビジネスを生み出すというよりも現状の業務の改善などにとどまっており、将来へのビジネス創造や危機意識は低い。
また、マネジメント層のAI関連の技術への理解は乏しく、AIを理解しないままビジネスに導入している状況はドイツや米国と比べても大きな遅れをとっている。
このような意識や導入状況の差がある中では、日本は世界のAI関連の市場からも大きく取り残されていく可能性がある。
AIビジネスを本格的にビジネスとして離陸させていくための一つの手段として、データを主体としたAI関連のエコシステムをつくりだしていくことが重要だ。
データを主体としたAI関連のエコシステム(イメージ例)を各プレイヤー別に整理し、図でまとめると以下のとおりである。
- Data Provider(Data Holder)
データを保有し、第三者への提供する事業者。オープンデータなどに代表される公共データから、工場の設備稼働データなど業界特化型のデータがある。 - Data Aggregator
データを集約・統合し他事業者への提供する事業者 - Data Broker(AI Platformer)
データをベースとした機械学習、画像・音声認識、言語処理などを活用したプラットフォームを提供する事業者 - Service Enabler
AI、データを活用したプラットフォーム環境を構築するための必要なIT製品、機械学習などのソフトウェア、クラウドサービス、ネットワークなどを提供する事業者 - Smart Machines Maker
ロボットやドローン、自動運転車などのスマートマシンの製造や提供をする事業者 - University & R&D & Venter Capital
大学や企業の研究機関によるR&DAI関連ベンチャーへの投資を行う事業者 - Developer
AI系のサービス/アプリケーション開発を行う事業者 - Servicer
業界・業種別のAI系サービスを提供する事業者 - Integrator
スマートマシンからOS、ネットワーク、クラウドサービス、データ分析やAI系アプリケーションまで含めた構築運用を行うインテグレーター - Final Consumer
AIネットワーク化のシステム環境を利用する企業および個人
以上のように、Data Provider(Data Holder)がデータを公開し、最終的にFinal ConsumerがAIを業務に活用し、業務改善や新しいビジネスに展開できる環境を作れるかがポイントである。その過程では、関連する事業者がWin-Win関係となり、相互に収益をあげられるエコシステムモデルを形成することが前提となる。
特に重要な位置づけになるのは、「Integrator」、いわば、“人工知能のSIer”の存在だ。業界・業種別のFinal Consumerに対して、マシンから業界・業種別アプリケーションまでを含め、AIを実装した製品やサービスを展開する役割を担う。
例えば、こちらでも紹介したが、農業分野では農家のニーズに対して、苗植えや刈り取り雑草除去を自動で担うスマート農機や、農作物の育成状況の把握できる農業用ドローンの導入の際、「Integrator」が必要である。