三和交通の「ドローンTAXI」を覚えてるだろうか? 2016年のエイプリルフールのネタだったが、Aeronesのこの動画は既にほぼ同じビジュアル(手でぶら下がってる)だし、ドバイでは今年にはドローンタクシーの試行運転が始まるようだ。
そのうち自家用の空飛ぶドローンも出てくるだろう。そんなことになると、やっぱドローン保険に入らないといけない。
その保険業界であるが、金融サービスの中では、実は最もテクノロジのイノベーションによって変わろうとしている業界である。FinTechのキーワードに象徴されるように、金融サービス業はテクノロジで大きく変わろうとしているが、例えば銀行や資産運用は、目に見えないおカネを中心にして、金利や手数料のレベルがディスラプトされていく。
一方で、保険サービスは、おカネだけではなく、車であったり、人であったりと、保険の対象物がステークホルダーとして登場する。そして、その対象物が空を飛んでみたり、自動運転になってみたり、長生きしたりと大きく変化しようとしている。つまり、通常のFinTechよりもイノベーションの変数が多いのだ。
例えば自動車保険では二つの動きがある。一つはテレマティクス保険で、自動車にIoTデバイスを装着することで運転状況を把握し、その特性に応じて保険料を割り引くというものだ。
もう一つは、P2Pインシュランスと呼ばれるもので、同じような運転特性を持つグループで保険料金や請求額を分担することで、相互の牽制を働かせ、無駄な保険料の支払いを抑制しようとするものだ。
テレマティクスは日本でもサービス化が進みつつあるが、P2Pは海外でもまだ黎明期にあるようだ(Financial Times)。ただ、どちらも安全運転のインセンティブを与えることで、運転手にとっても保険会社にとってもメリットが生まれる仕組みだ。
医療保険では、スタートアップのOscarは、単に医療保険を提供するのではなく、健康維持のアプリや医者との電話診断など、健康維持のためのサービスをあわせて提供するモデルを実現している。
保険サービスは、決済のような日常的なトランザクションが存在しない分、契約時以外は利用者の距離が開きがちである。ところが、日々利用する車や人間そのものがその対象である分、その対象物との結び付きを強くするテクノロジは、今までにない関係性を保険会社と顧客の間に構築する可能性がある。そして、それはOscarが実現しているように、保険に留まらない付加価値サービスへ展開する可能性がある。
個人的にはドローンタクシーみたいなので海の上まで直接連れて行ってもらって、そのまま釣りができるサービスとかあるといいなと。この利用方法に保険は付かないだろうけど。
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
アマゾンウェブサービス ジャパンにて金融領域の事業開発を担当。大手SIerにて金融ソリューションの企画、ベンチャー投資、海外事業開発を担当した後、現職。金融革新同友会Finovators副代表理事。マンチェスタービジネススクール卒業。知る人ぞ知る現代美術教育の老舗「美学校」で学び、現在もアーティスト活動を続けている。報われることのない釣り師