包括的なアプローチ
こちらにおいてもPOCは行うのだが、POCに入るまでと入ってからの検証項目が業務面・IT面、また、組織面においても網羅的であり、最初のフェーズとしてはある程度の期間を伴うがそのまま次のフェーズを展開していきやすいため、全体としては早く効果の刈り取りまでいける可能性が高くなる。
簡便なアプローチと逆に、金融機関や公官庁や電力・ガスなどのユーティリティ業界のように労働集約的な業務がまだ多く残っている産業・組織においてはRPAが効果を生み出すことは明白であるため、早く大きな効果を刈り取るためには、むしろ最初の段階で包括的な検討をすることがむしろ近道だと言える。
製造業などにおいても生産現場などにおいては、生産ラインの自動化は進んだがそれでもそれを支える生産計画・生産管理などの周辺の実務において、まだ労働集約的な部分が残っているケースも多く、生産性の向上においては効果が出ることを前提にある程度の規模の導入に耐えうる進め方をすることが望ましいと筆者は考える。
同じPOCをやるにしても、検証すべきポイントを明確にしてから臨むため、得られるアウトプットも大きくなり、その後の展開はスムーズに入れるはずだ。
こちらのアプローチはPOC完了までに6週間というわけにはいかず、もう少し期間を取る必要があり、投入する工数が比較的大きくなるが、全体としては早く成果にたどり着ける。
もちろん、自社における投資意思決定のあり方によってふさわしいアプローチがあるため、一概にはどちらが良いとは言い難い。だが、各社における事例が積み重なってきているため、それらの事例に学んで最も効率的な進め方を選択してもらいたいと考える次第である。
- 信國泰(デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 パートナー)
- ビジネスモデルトランスフォーメーションサービスの責任者。CFOサービス、サプライチェーンマネジメントの分野で数多くのプロジェクトを手がけており、グループ全体にまたがる機能再配置や連結業績評価・損益管理、財務オペレーション改革、販社営業改革、グローバルPSIなど、改革立案から実行、IT導入まで改革プロジェクトをクロスボーダー・フルライフサイクルで数多く実行している。