第1回では、オペレーション自動化の技術である「RPA(Robotic Process Automation)」の概要や、その効果、効果が期待される理由について述べた。RPAがここまで話題になっていることからも見て取れるように、その効果は明らかで、業界を問わず多くの企業が期待を寄せている。
とある企業のプロジェクトでトライアルロボットの作成完了後に、対象部門の部員に対して行ったアンケートで象徴的な回答が得られた。作成されたトライアルロボットの動きを動画で見て実に90%の部員が「自分の日常業務にも一部または半分以上適用可能である」と回答したのである。もちろん一企業の一部門のアンケート結果ではあるが、この結果は多くの企業にも当てはまる、現状を端的に表しているようにも思える。
1990年代、企業は統合基幹業務システム(ERP)の導入を中心に各業務領域のITが統合された世界を目指した。実現できるのであれば、これが理想であることは言うまでもないが、同時にパッケージとして提供されるITシステムも、業界、業務領域など、全方位対応できるわけではないという現実も見えた。
結果として、特定の領域には特定のアプリケーションが使われるというランドスケープが一般的になり、そのシステム間にこぼれたデータ処理を拾うのは人間の仕事というのが定着している。
これこそ9割が「一部または半分以上適用可能」と答える実態なのではないか。業務を完了するのにITシステムを全く使わないというケースはまれで、逆に業務のすべてがITシステムを使って完結するケースもまた然りである。
EUCか、トランスフォーメーションか
こういった現状を打開すべく、2016年、日本でも多くの企業がトライアルのRPA導入を手掛けた。財務シェアードサービスセンターでトライアルに取り組んだ企業では、債権管理において自動入金消込の後の手動消込を一部ロボットで担い、月末と月中で2.6倍あった業務工数の繁閑差を1.5倍まで下げることを実現している。
人事領域でも、中途採用の一次選考を対象とした例で、複数の異なるキャリアサイトの応募者データの加工と、条件の判定のうち機械的に人が担っていた部分を自動化し、60%以上の工数削減を実現。週末に集中する応募者の選考でも業界経験を深く精査することに時間を費やせるようになったという事例がある。