NTTデータとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は8月29日、ITインフラからアプリケーションまでをカバーする“フルスタック”サービスでの協業を発表した。2018年4月に提供を開始する「NTTDATA三鷹データセンターEAST」からのサービスを皮切りに、グローバル展開を図る。
NTTデータとNTTコミュニケーションズの協業サービスの枠組み
協業では、NTTデータのシステムインテグレーションサービスと、NTT Comのネットワークやデータセンター運用、セキュリティ対策などのサービスを組み合わせ、両社それぞれの企業顧客へ一元的に提供していく計画。まずはNTTDATA三鷹データセンターEASTを拠点にしたサービスが軸になるが、グローバル展開も図ることで、2020年度までにのべ1000億円規模の事業に成長させる計画を掲げている。
NTTデータ 取締役常務執行役員 法人・ソリューション分野および中国・APAC担当の山口重樹氏
同日の記者会見でNTTデータ 取締役常務執行役員 法人・ソリューション分野および中国・APAC担当の山口重樹氏は、国内企業で“デジタル変革”がテーマの新規事業のシステムと、基幹事業のミッションクリティカルなシステムとの連携・統合ニーズが高まっていると説明した。
企業顧客の多くは、新規ビジネス単体での収益化に課題を抱え、基幹事業との連携による収益化を検討しているという。このためシステム面では、主に新規ビジネスのシステムが稼働するクラウド環境と、基幹事業のシステムが稼働するオンプレミスなどの環境との一元化が必要になっているとした。
NTTコミュニケーションズ 取締役クラウドサービス部長の森林正彰氏
NTT Com 取締役クラウドサービス部長の森林正彰氏は、同社がグローバル展開するネットワークやデータセンター関連サービスにおいて、企業顧客からアプリケーションに対するサービスへの期待が高まっていると述べ、システムやアプリケーション開発を強みとするNTTデータとの協業は「自然の流れであり、同じNTTグループで協力するのは当然のこと。この分野の事業をより大きくしていくという両社の思惑が一致した」を述べた。
今回の協業の起点となるNTTDATA三鷹データセンターEASTは、国内最大規模という5600ラックの収容能力を持つ。NTT Comは、同社以外のデータセンターでは初めてIaaSの「Enterprise Cloud」サービスの提供基盤を三鷹データセンターEAST内に構築し、NTTデータ側の設備とも構内接続できるようにする。また、クラウド間接続サービス「SD-Exchange」を介して、国内外の他のデータセンターやクラウドサービスとも接続させ、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドのサービスを展開していくとした。
NTTDATA三鷹データセンターEASTにおけるサービス提供基盤のイメージ
今回の協業によるサービスは当面、国内企業を対象にしているが、2社では海外にあるそれぞれのデータセンターを利用したサービス提供も視野に入れている。
山口氏は、「日本企業のグローバル展開はまだ道半ばにあり、日本を起点に海外でも利用できるITサービスへの需要はこれから」と話す。森林氏は、「当社もNTTデータも、M&Aなどを通じてさまざまなグローバルビジネスを展開しており、各国の市場でNTTグループとしての強みを発揮していける」と語った。
企業のITシステムではクラウド化の流れが進んでいる。海外ではグローバルITベンダーによるクラウドサービスへの移行が加速しているが、森林氏は「競合に対しては、NTTグループでフルスタックをカバーし、どのようなニーズにも対応できる点で差別化していく。あらゆるクラウド環境を“可視化”し、ユーザーにITの全体像を提示できる点に強みがある」とした。
“デジタル変革”系のシステムと基幹系システムの一元化ニーズが高まっているという
山口氏は、「データセンターからアプリケーションまで一気通貫で対応するノウハウを生かし、高信頼性が求められるミッションクリティカルなシステムでも、スピードや柔軟性が求められるクラウドシステムでも、顧客のニーズに合わせた最適なシステムを提供できる強みを発揮したい」とコメントした。