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人類独自の「知性」とAI固有の「知性」は異なる可能性がある - (page 3)

高橋幸治

2017-09-02 07:30

「ジョン・ウィルキンズの分析言語」におけるボルヘスの寓話

 映画『メッセージ』で描かれる中核のモチーフはこの“時間や空間を含めた世界の把握は使用されるそれぞれの言語によって規定される”という「サピア=ウォーフの仮説」である。つまり、私たち日本人は日本語という言語の体系によって世界を文節し、日本語によって切り取られた世界を認識している。

 同様に米国人や英国人は英語によって構造化された世界に住み、中国人は中国語に、韓国人は韓国語によって構造化された世界に生きている。これは、人間の思考や認識、知覚にとって言葉がいかに重要なものであるか……。つまり、言語が持つ偉大なる可能性を示していると同時に、“ひとつの言葉によって世界のすべてを語り尽くすことはできない”という言語の限界性をも示している。

 アルゼンチン出身の作家であるホルヘ・ルイス・ボルヘスは『ジョン・ウィルキンズの分析言語』(岩波文庫『続審問』に所収)という小編の中で「われわれは宇宙を創造した神の計画を測り知ることはできない。しかしだからと言って、人間によってこころみられた一連の計画について一瞥しておくことまで諦める必要はないし、われわれはそれらが暫定的なものに過ぎないことを弁えている」と前置きしつつ、「善知の天楼」なる中国の百科事典において動物がどのように分類されていたかを次のように記している。

a、皇帝に属するもの

b、香の匂いを放つもの

c、飼いならされたもの

d、乳呑み豚

e、人魚

f、お話に出てくるもの

g、放し飼いの犬

h、この分類自体に含まれているもの

i、気違いのように騒ぐもの

j、数えきれぬもの

k、駱駝の毛の極細の毛筆で描かれたもの

l、その他

m、いましがた壷をこわしたもの

n、遠くから蝿のように見えるもの

 この寓話的な動物のカテゴライズは滑稽かつ珍妙に見えるけれども、「サピア=ウォーフの仮説」を見事に表現している。そしてボルヘスの言葉(※ボルヘス「続審問」Amazon)を借りれば、ある特定の言語による世界の文節化は「暫定的なものに過ぎない」ということを雄弁に物語っている。

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