日本IBMは9月27日、Watson事業でのパートナー施策の変更を発表した。ソフトバンクとの協業体制を変更し、45種類のパッケージサービスも投入する。
新たな施策では、従来ソフトバンクと同社パートナーに一任してきたWatson関連ソリューションの販売や導入支援サービスなどをIBMのパートナー10社でも手掛ける。併せてソフトバンクは、Watson関連サービスの提供基盤となっているIBMのクラウドサービスを販売する。
また、これまでの採用実績をもとにWatsonの導入に伴うコストや期間を約3分の2に削減できるというソリューションパッケージを新たに販売する。メニューはIBM側が16種類、ソフトバンク側が29種類の計45種類で、顧客対応でのチャットボット機能や保守・メンテナンス現場における技術支援、生産現場での検品精度の向上といった内容をラインアップする。
今後はWatson関連事業のパートナーとソリューションパッケージのメニューを順次増やしていくとした。
Watson“人気”で対応ひっ迫
日本IBM 取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏
施策について発表した取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏によると、2016年にWatsonの日本語APIの提供を開始したことで企業からの引き合いが急増しているという。2017年春時点で国内のWatson導入は200社を超え、「現在はさらに数百社のオーダーがある状況」(三澤氏)とし、対応がひっ迫していることから、ソフトバンク側に一任していた体制をIBM側にも広げることで需要に応えていくという。
「人工知能(AI)ブームの中で、Watsonは本番サービスに使われている点が他のAIとは違う。AIのエンジンだけでは探索や発見、意思決定の支援といった目的を実現できない。アプリケーション開発を含め、AI活用にはクラウドやAPIといった要素が必要で、これらを包括的に提供できる点がIBMの特徴」(三澤氏)と強調している。
同社は、7月にWatsonとクラウドの事業部を統合し、現在は三澤氏と執行役員 ワトソン事業部長の吉崎敏文氏の体制で事業を展開する。
日本IBM 執行役員 ワトソン事業部長の吉崎敏文氏
吉崎氏は、新たなソリューションパッケージのコンセプトを「AI in a Box」と表現し、そのメニューについて(1)実績に基づく業界トップのソリューションから選定、(2)必要なコンポーネントをパッケージ化、(3)エコシステム拡大による迅速な提供――の3つを特徴に挙げた。
各メニューとも、企業が保有するデータの洗い出しやWatsonに学習させて利用目的に適用していくまでの技術検証フェーズ、本番仕様としての開発や構築のフェーズ、運用フェーズの各段階に即して、ユーザーは利用していけるという。
「『まずはAIをやれ』という掛け声で取り組み始めるケースは多いが、いざ始めてみると、いろいろな部分にスイートスポットがある。そこをカバーするのが今回のソリューションパッケージで、今後メニューを増やしていく」(吉崎氏)
また吉崎氏は、企業がWatsonを利用する際に、データの保有権がユーザー側にあることを契約で明記している点が同社のサービスの特徴だと説明した。AIサービスの中には、ベンダーがユーザーのデータから得られたアルゴリズムやノウハウを他のユーザー向けに提供するようなケースがあるとし、データの機密性を懸念するユーザーは少なくないという。
このためIBMがユーザーのデータを使用する場合には、ユーザーとの合意を踏まえて実施しているという。ベンダーがユーザーデータの取り扱いに配慮することは当然という見方もある中、「ビジネスのためにAIを利用していく上で、しっかりこの考え方を提示することは非常に大切だ」(吉崎氏)としている。
施策変更に関する同社の説明資料は下記の通り。