展望2020年のIT企業

O2Oマーケティングで上場を果たしたITベンチャー - (page 2)

田中克己

2017-10-25 07:30

電子マネーと位置情報の新規ビジネス

 アイリッジは最近、いくつかの新規ビジネスに取り組み始めた。電子地域通貨と位置情報の行動分析ソリューションの2つで、いわばO2Oの周辺になる。クーポンの発行、来店、支払い手段の提供へとバリューチェーンを広げるものだ。

 地域経済を活性化させる地域限定の決済アプリになる電子地域通貨は、消費者がスマホで店頭のQRコードを読み取り、支払い金額を入力し、店舗スタッフが確認した後、ユーザーがボタンをタップし、決済する仕組み。店舗はQRコードだけを用意すればいいので、導入費用は実質ゼロになる。消費者も電子マネーの支払いになるので、財布から小銭を出し、おつりをもらうことがなくなる。地域が発行するプレミアム振興券にも近いが、使用期限がない。

 2017年5月から8月にかけて、岐阜県の飛驒信用組合と実証実験を行った。同信組の全職員約230人が高山市と飛騨市の41店舗における4000以上の取引など商用環境の実績を積み上げた結果、2017年11月にも商用化を開始する計画だという。「地域内の経済循環だが、地域間での使用も考えられる」と、小田社長は夢を膨らませる。

 一方、行動解析ソリューション「ジオリーチ」は、popinfoの位置情報を活用するもので、例えば顧客が「3カ月来店なし、競合店に月4回訪問、マンション在住」などといった情報を整理・把握し、さらに「子育て中の専業主婦」などとセグメントする。そして、顧客の関心の高い情報を提供し、購買につなげる。この2つのサービスで、2018年7月期に1億円の売り上げを見込む。総売り上げは20億円を計画している。

 小田社長は「まだまだ成長する市場だ」とし、O2Oマーケティングを強化・拡充する新しい事業を創出し、スマホ・マーケティングからデジタル・マーケティングへとビジネスモデルを進化させることを目論む。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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