国慶節で台頭するO2Oサービス

山谷剛史

2016-10-18 06:00

 国慶節(10月1日から7日までの1週間)の旅行レポートが出てきた。旅行予約サイト「途牛網」がリリースした「2016年国慶出遊盤点報告」によると、海外旅行の行き先では、タイ・韓国・日本がトップ3となり、続いてアメリカやヨーロッパも人気を獲得している。沿岸部の大都市だけでなく、内陸の省都や省の2番手3番手の中都市でもニーズが高まっているという。中国国内旅行の行き先では、雲南省や海南省などが人気に。連休開始の数日前から休日をとる動きも出てきて「より遠方へより長く」という傾向がまだまだ続きそうだ。ツアー旅行から個人旅行に人気が移行する中で、中国国内外で民泊のニーズも高まっている。中国の民泊市場の規模は拡大が続き、2020年には700億元超、つまり1兆円市場になると見込まれる。

 中国メディア「中国経済報」によると、日本が人気の海外旅行先となっていることから、そこでの民泊ニーズを見込んで、トイレや炊飯器に続き、日本の不動産が中国富裕層の爆買いのターゲットになっているという。中国本国の株価よりも安定していて、また上海や深センの不動産よりも安く買えることから、日本の不動産市場はアメリカ、カナダ、オーストラリアに続いて、中国人投資家が熱視線を送っているのだそうだ。日本における中国人の民泊利用については、過去記事「やはり中国人観光客はAirbnbを使わない--都心のマンションへの出入り増えるも」を参照してほしい。

 さて国慶節での大型連休はどうしても日本などへの海外旅行に目が行くが、一方で都市から離れて郊外で民泊を1週間利用し、仲間内で盛り上がる人々も一定数いる。彼らはただそこにとどまるだけでなく、ネットサービスを十二分に活用する。趣味趣向が同じ若い世代のグループが最新のネットサービスを活用しながら、合宿のように休暇を楽しむ。

 「回家吃飯」という新興のO2Oサービスは、料理人が材料や器具を持ってきて調理してくれるサービスだ。北京や上海など大都市限定のサービスだが中秋節や国慶節での利用に向けて、地下鉄の駅などで積極的に広告を展開していた。「郊外の自然に囲まれた家に住み、自分らの口に合ったおいしいものを食べたい」という人々のニーズに応えるサービスだ。「安心の食材・安心の油(地溝油は不使用)」と安全安心をアピールするが、他人の家で調理するので衛生具合は家の状況に依存する。国慶節で利用は増えてはいるが、関係する法律が未整備で、中国メディアは「衛生面に問題はないか」と警鐘を鳴らす。

 都市にとどまって友人や家族と会い、ショッピングやレストランに行く人々もいる。近年のショッピング事情として、オンラインで見てすぐに購入するのではなく、店舗で実物を見て触ってから、連動したオンラインショップで購入するO2Oスタイルが評価されつつあり、政府もその導線を推奨している。そうした中で家電量販店最大手の蘇寧電器(Suning)は、国慶節にあわせてO2Oに特化した旗艦店を大都市を中心に17カ所オープンした。今後の動きは未知数だが、日本においても観光客がアンテナショップなどでモノを見て、中国のオンラインショップで買える仕掛けをつくれば時流に合うかもしれない。

 従来のO2Oサービスでは、クーポンサイト最大手の「美団」の利用が伸びた。10月1日にはホテル予約が80万予約、3日にはチケットが1日120万枚販売で新記録を更新した。美団は口コミ最大手の「大衆点評」と提携している一方で、「BAT」と呼ばれるネット業界を代表する「百度」「アリババ」「テンセント」の傘下にはない。蘇寧電器はアリババと提携をしているが、BATとは距離を置く美団などの国慶節での台頭に、「BAT3社寡占の終わり」を予見する中国メディアも。

 訪日旅行客の中で中国人旅行者は最も多い。改めて、今中国国内で旬のサービスが日本でも利用できれば(正しい広告で多くの中国人に伝われば)、多くの中国人が利用してくれるはずだ。

山谷剛史(やまやたけし)
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。現在NNA所属。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)」など。

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