CIOが人事部門と連携すべき理由

CIOが知るべきエンジニア採用の秘訣

多田洋祐(ビズリーチ)

2017-11-11 07:30

 ビズリーチで取締役を務める多田洋祐です。われわれは、HRテック(HR×Technology)のベンチャーとして、これまで7100社以上に対して採用を支援してきました。

 即戦力人材の獲得競争が激化している今、採用のプロフェッショナル「プロ・リクルーター」の存在が注目を集めています。事業戦略に基づいて採用計画を立案し、自社で採用したい人材を企業が自ら探し出して声をかけ、能動的に採用活動を行う「プロ・リクルーター」。海外だけではなく、日本でもこの動きは加速しています。優秀な人材の獲得が難しいエンジニア採用では特にプロ・リクルーターが必要です。

 そこで今回は、「プロ・リクルーター」がどのようにエンジニア採用に取り組んでいるかについて、CIO(最高情報責任者)的な視座から、具体的な役割と育成方法を紹介します。

採用のプロフェッショナル「プロ・リクルーター」の4つの役割

 プロ・リクルーターの役割は多岐にわたります。その役割・業務をまとめてみました(企業規模や採用人数などにより、いくつかの役割・業務を兼任することもあります)。

【出典】『採用学 Ⅳ』ビズリーチHR 研究所
【出典】『採用学 Ⅳ』ビズリーチHR 研究所

 ここからは、各役割について紹介します。

1)マネジメント・戦略立案

 採用責任者は経営戦略・事業戦略に基づいた採用戦略を決定します。そのために、まずは徹底的に経営戦略・事業戦略を理解し、その上で、事業成長に寄与するのはどんな人材か、またそうした人材を獲得するにはどのような戦略を採るかなどを検討します。

2)配置・分析

人材定義・配置:

 人材定義・配置はHRBP(HRビジネスパートナー)が行います(HRBPについては、第2回を参照)。事業部長などの経営幹部や現場リーダーなどにヒアリングし、綿密なすり合わせをした上で、どの部署にどのような人材を何人配置するのかを決め、同時に、人材要件を定義します。

データ分析:

 HRアナリストが候補者の選考結果を可視化し、効果測定・分析を行います。その結果をもとに、選考通過者と不採用者の特徴を明確にし、採用活動を改善します。確実に採用目標を達成するためには、このPDCAが重要です(HRテックツールの活用については、第3回を参照)。

3)採用マーケティング・ブランディング

 採用マーケティングは、採用ターゲットを消費者と同様に考え、認知から入社までの体験を提供していく手法です。ここ数年、技術力があることを積極的にPRし、テックブランディングを行っている企業と行っていない企業が二極化していますが、ブランディングを行っている企業はエンジニア採用において、非常に有利になっています。

採用労働市場理解:

 採用マーケティングを実行するためには、自社のポジショニング、競合の取り組み、採用したいポジションの潜在層が在籍する企業や職種の採用相場、新興企業の動向などを理解し、勝ち抜くために何をすべきか、考える必要があります。

採用プロモーション:

 エンジニアによる技術ブログの開設、社外の方も参加できるエンジニア勉強会の開催、その他にプロダクトに利用する技術力をアピールしたり、在籍する著名なエンジニアを外部メディアも使いながらPRしたりと、その方法はさまざまです。

 エンジニア勉強会は、面談や面接のために来社した候補者から見える場所で開催すると、候補者にその雰囲気が直接伝わり、効果的です。ちなみに弊社では、エンジニアやデザイナーが頻繁にイベントを開催しており、集客はエンジニアをつなぐIT勉強会支援プラットフォーム「connpass」で行っています。「connpass」内に弊社が運営するグループ「D-Cube」があり、グループのメンバー数は4900人以上、「connpass」グループメンバー数ランキングで3位(2017年10月時点)で、さまざまなエンジニア、デザイナーとの接点が広がっています。

 ここまで徹底して実施しなくても、まずは自主的に勉強したいエンジニアに対して、会場提供や集客、運営などの面で会社としてサポートするといいでしょう。また、勉強会を運営するエンジニアを、会社として適切に評価することで、彼らのモチベーションを維持、向上することもできます。

 テックブランディングを強化している企業の中には、技術力があるエンジニアを採用するためにコミッターなど著名なエンジニアを採用するケースもあります。例えば、株式会社SpeeeがRuby開発者のまつもとゆきひろ氏を技術顧問として、元クックパッド技術部長の井原正博氏を開発部顧問として採用。株式会社一休が複数企業の技術顧問を務めてきた伊藤直也氏を執行役員CTO(最高技術責任者)として採用したことなどが業界内で話題になりました。

 ただし、採用して終わりではなく、著名なエンジニアにはその企業で働き続けるメリットを提供し続けることが重要です。優秀なエンジニアは引く手あまたであるため、その企業に在籍する意味を見出せなくなると転職してしまう可能性が高くなります。自分がやりたい研究開発ができる、高給であるなど人によって重要視する項目は異なりますが、CTOなどが随時ケアをして、Win-Winの関係を構築し続ける必要があります。

社員満足度向上:

 企業の従業員が投稿する口コミサイトの登場、リファーラル採用の強化などに対応するためにも、従業員満足度を上げ、退社の際も円満に退社できるような内的マーケティングが重要です。

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