小売業の実店舗にAI(人工知能)やビッグデータ、IoT(モノのインターネット)などの技術を持ち込みたいIT企業は、それぞれに未来の店舗の姿を提唱している。
しかし果たして、そのような未来の店舗は本当に実現するのだろうか。ニューヨークで開催された全米小売業協会(NRF)のカンファレンスでは、IT企業が列をなして小売企業に新たな店舗の形を売り込んだ。小売業がデジタル変革の中心的な要素であることを考えれば、それも当然かもしれない。消費者の体験は極めて重要であり、小売店は優れた「ペトリ皿」になるはずだからだ。また、小売企業には今後、テクノロジに投資する財務的余裕が出てくると見られる。
2018年には、小売業者の状況は(少なくとも生き残った企業については)2017年よりもかなり好転するはずだ。在庫の管理は行き届いており、消費者の消費意欲も強まっている。Amazonの業績も上がっているが、すべての消費を囲い込めているわけではない。小売業界の現状を見てみよう。
- 米大手小売チェーンのKohl'sは、2017年11月と12月の店舗売上高が前年比6.9%増を記録したと発表した。Kohl'sの最高経営責任者(CEO)Kevin Mansell氏は、年末商戦の売上は前年に引き続き堅調で、デジタル需要も「大きく加速した」と述べている。同社は収益見通しを上方修正した。
- 米国の百貨店Macy'sは、11月と12月の店舗売上高が1%増加したと発表している。同社は、「年末商戦シーズンで堅実な結果を残した」としている。
- Mastercardが提供する消費者動向分析レポート「SpendingPulse」では、米小売業界の年末商戦の売上高が4.9%増加したと報告している。この前年比成長率は2011年以来最大の数字で、消費者心理が改善していることを示している。
小売業界界隈では悪いニュースも出ているが(例えばSears)、業界全体としては最悪の状況は脱したと見ていいだろう。このタイミングでテクノロジに投資するのは、当然のことのように思える。
2年前には、オムニチャネルの話題が盛り上がりを見せ、一部の小売業者(目立った例としてはBest Buy)は、計画をうまく実現した。また2017年には、Intelが小売店のイノベーション向けのIoT技術に投資していく計画を示している。
2018年には即応性が重要なテーマとなり、オートメーションや購買者のニーズの予想も話題になっている。その基本的な考え方は、最高の顧客体験を提供することが、ある程度はAmazonへの対抗策になるというものだ。
だが現実には、新しいテクノロジが消費者の身近にある店舗に導入されるペースは遅々としている。一部の小売業者の取り組みが遅れているのは、借り入れ負債や売り上げの減少、厄介な悪循環などが原因かもしれない。しかし財務状況が健全な小売業者も、変革に前向きな姿勢は示しているものの、目に見える取り組みは多くはなさそうだ。マジックミラーや感情計測カメラ、ビデオ分析などの取り組みもあったが、2014年頃に話題となったこれらの見栄えのいいイノベーションを別にすれば、あまり目立った取り組みは見られないように思う。