人手不足への対応、デジタル人材の獲得に向けて
もう一つの狙いというのは、人手不足への対応、さらにはデジタル人材の獲得である。JRCSの近藤髙一郎社長は発表会見で、海運・海洋産業の現状について次のように語った。
「海運・海洋産業は、厳しい環境の職場として若い人たちから敬遠されている。また、船舶では日本人の船員希望が少なく、外国人船員が増えている。世界中とつながっている海は最初からグローバルオペレーションで、グローバルマインドを養える、ワクワクするような場所でなくてはならない。しかし、今は人手不足に悩まされている。この産業の一端を担う企業として、こうした現状を何とか打開していきたい」
さらに、こう続けた。
「そのためには、自ら変革を起こしていく必要がある。そう考えていたところ、HoloLensなどを活用したデジタルトランスフォーメーションのさまざまな事例を知り、強い関心を抱いた」
日本マイクロソフトの平野拓也社長は今回の動きについて、「地方を拠点としてグローバルビジネスを展開する企業が、こうした取り組みに注力していることに大きな意義があると考えている。しかも海運・海洋産業に携わる多くの人々が、いわゆる作業現場で働いている。これまで当社は“働き方改革”を支援してきたが、その多くがオフィスワーカー向けだった。今回はまさしく作業現場の働き方改革を支援していきたい」と述べた。
中でも、近藤氏の「ワクワクするような場所でなくてはならない」、および平野氏の「作業現場の働き方改革を支援していきたい」という言葉に、人手不足を何とかしたいとの思いがにじんでいると感じさせられた。
海運・海洋産業に携わる多くの人々が作業現場で働いている(出典:両社の発表資料)
さらに、デジタル人材について、会見の質疑応答で近藤氏に「どのように獲得するか」と聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。
「デジタル人材の獲得が難しいのは承知しているが、最先端のデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいることをリクルーティングでも懸命に訴えながら、当社に興味を抱いてもらえるように努力していきたい」
地方の中堅製造業者にとって、デジタル変革はまさしく「人材獲得」にも切実な狙いがあると感じた会見だった。