海外コメンタリー

AI、エッジ、「Microsoft 365」などで多様なサービス展開--「Build 2018」で見えたこと - (page 2)

Tony Baer (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-05-11 06:30

 話題の中心はAIだったが、事前のブリーフィングやBuild初日の基調講演のストリーミングを見てわれわれ記者が強く感じたのは、「Microsoft Office」がより包括的な何かへと変わりつつあるということだった。Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloudとは違い、Microsoftはもともとオンプレミス製品の企業として生まれた。そして、それを足かせとするのではなく、むしろ足がかりとして利用してきた。同社はクラウドによって、かつてOfficeだったものを、ナレッジグラフやデジタルアシスタント、IoTなどの技術を活用でき、その下でコンテナを動かせる1つの製品ポートフォリオにまで拡大した。実際、Office 365はAzureの初期の成長に拍車をかけていたかもしれない。

 Microsoftはどんなデバイスを使っているユーザーにも対応できることを売りにしている。Windowsのシェルには、モバイルデバイスでもデスクトップでも、同じユーザー体験で文書やスプレッドシートにアクセスできることを特長とした共通APIが導入されている。ローカルにあるExcelのスプレッドシートから、クラウドの機能を呼び出すこともできる。また、Microsoft 365を裏側で支えるのは「Microsoft Graph」だ。Microsoft Graphは、従来のOffice文書や企業のディレクトリよりも進化した、外部世界の空間データ、地理データ、デバイスデータも取り込んだ拡張可能なナレッジグラフのおかげで、時系列を通じてインタラクションの文脈を保つことができる。ロードマップによれば、Cortanaとの統合が行われてパーソナルアシスタントを強化し、会議のスケジュールを調整できるだけでなく、Amazonの「Alexa」とやりとりしてUberを呼び出すことさえできるようになるという。

 フロントオフィス以外では、Microsoftは物理的な資産を扱う企業にも目配りしており、「HoloLens」を使った複合現実(MR)アプリケーションで、製品の製造や、メンテナンス、取り付けなどの作業を支援するというシナリオもある。現実世界との結びつきを提供する技術としては、デバイス自体、デバイスの付近、あるいはクラウドのいずれでも実行可能な共通プログラミング環境を持つ「Azure IoT Edge」も用意されている。また、この分野ではLinuxも重要な存在になっており、Dockerコンテナとして展開されたコードは、そのままWindows PCでも「Raspberry Pi」のデバイスでも実行できる。もちろん、クラウドからエッジへと存在感を拡大しようとしているのはMicrosoftだけではない。AWSも「Amazon Greengrass」を提供している。

 三大プロバイダーはもともと、それぞれ異なる立ち位置からクラウドにアプローチしてきた。Amazonにとっては、クラウドは同社のバックオフィスを動かしているデータセンターを生かして規模の経済の恩恵を受けるためのものであり、開発やテストプロジェクトを手掛けてからは、多くの大企業を引きつけている。現在でも、Amazonが提供するクラウドサービスやインフラは、もっとも大きな広がりと奥行きを持っている。Googleにとってクラウドは、自社の事業でAIを幅広く利用し、全自動式のインフラ管理アプローチをとっている企業としての評判を生かしたビジネスだった。Microsoftに特長があるとすれば、それは多くの知識労働者達が長年仕事をしてきたプラットフォームとしての存在感だと言えるだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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