日本IBMは6月11日から2日間、ユーザーイベント「think Japan」を都内で開催している。IBM Code Dayと位置付けた初日は、IBMのフェローで、ソフトウェアエンジニアリングとWatsonのチーフサイエンティストのGrady Booch氏が登壇した。
基調講演内で、ソラコム社長の玉川憲氏などによるパネルと、 ピクシーダストテクノロジーズ社長の落合陽一氏やタレント・プログラマーの池澤あやか氏が出演するパネルの2つを開催した。これからのエンジニア像としてセンセーショナルな側面を強調、それが創造的破壊の担い手になるというIBMの狙いへとつながっている。
左から落合氏、池澤氏、ミクシィの村瀬氏、SOMPOシステムズの西野氏、IBMのマルコ・スカルツァネッラ氏。
今後の開発環境について、「東京、福岡などさまざまな場所にいるエンジニアがツールでつながるプロジェクトベースのものになっていく」といったイメージで登壇者の意見が一致。「エンジニアは時間も空間も超えられる」とする。
働き方についても「100のなりわいを持つ」(落合氏)、「本業をしながらコミュニティ活動をすることで自分のブランドを上げ、結果的には所属会社の利益につなげる」(SOMPOシステムズの西野大介氏)、「1年は52週しかなく、週に1つ何かをしても52個しかできない。タイミング良く手を出すのが大事」(ミクシィ執行役員の村瀬龍馬氏)など、それぞれが独自の考え方を披露した。
「多様性はインターネットとSNSにより誰もが発言できるようになったことで生まれた」と話すタレント・プログラマーの池澤あやか氏
講演全体を取り仕切った日本IBMのデジタルビジネスグループ デベロッパー・アドボカシー事業部長の大西彰氏は、モデレーターを務めたパネルに、青いTシャツ姿で登場。日本マイクロソフト出身の大西氏は、硬いIBMのイメージを壊そうとしているとする。
IBMにとってのエンタープライズデベロッパーの多数派は本来、メインフレームを含めたミッションクリティカルな領域にいると考えられる。だが、あえて落合氏や池澤氏のような、デベロッパーの自由を楽しむ新世代のエンジニアや研究者を登壇させた。
「デベロッパーが未来を想像し、そこから高い目標を設定し、それに向けて進んでいくことが重要」と大西氏。「既存システムは変わらないんだ」という論調ではなく、「モダナイズされていくという潮流を提示するための人選だった」(大西氏)
また、米IBMのChief Developer AdvocateであるWillie Tejada(ウィリー・テハダ)氏は「UBERやAirbnbがなぜ存在しているのか、それはソフトウェア開発者がいるから」と指摘する。
「先日、UBERからクリスマスツリーが届いた。ライドシェアの企業と思っていたが、今では物流会社の側面も持つ。しかし、この会社、車両も物件も持っていないのである。これはまさに創造的破壊である」(Tejada氏)
IBMは、エンタープライズ市場における既存勢力でありながら、こうした「創造的破壊を仕掛けるプレイヤーでありたい」(Tejada氏)というのが現在の立ち位置。デベロッパー像について、先進的であろうとする表現を選んだ事情も、この辺りにありそうだ。