「ひとり情シス」の本当のところ

第10回:新人類社長の誕生--社長年齢の変化(後編)

清水博 (デル) 2018年08月10日 06時45分

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新人類世代

 今の時代、年齢や世代での議論は無意味になってきています。現に長い間、親しまれてきた「新入社員の特徴とタイプ」(日本生産性本部が発表)も2017年3月をもって終了しています。「パンダ型」「使い捨てカイロ型」など、その時々の世相を反映していてなかなか面白いものでした。1969年から約50年にわたって続いてきた取り組みのため、一抹の寂しさを覚えます。

 デルの日本法人が実施した調査の中で、社長の年齢を尋ねる項目があります。2017年末時点のデータでは、経営者の平均年齢は57.7歳で、前年の59.3歳から1.6歳若返りました。前回の記事で取り上げた帝国データバンクの「全国社長分析」では59.5歳だったので、こちらと比べても1.65歳ほど若いという結果になりました。デルの調査では、従業員数100~1000人未満の大企業・中堅企業を対象としているため、重厚長大な大手企業だともう少し年齢が高いのではないでしょうか。

 さて、平均年齢が57.7歳ということは、1960年以降の生まれになります。いわゆる「新人類世代」です。一般的には、1960~1970年ごろに生まれた年代を指すことが多く。社会を構成する一員として自覚や責任を引き受けることを拒否し、高尚な哲学や思想を語ることなどもファッション的に取り入れる、一風変わった若者として受け取られました。成人の時にテクノポップが流行っていた時代です。

 最近、会う社長の多くがこの世代になってきました。そういえば、昔たまにいた「ITが分からないから部下に任せている」という声はさすがに聞かなくなりました。むしろ、若いころから社内の情報システムに積極的に関わったり、ITを活用したビジネスモデルの構築に携わっていたりして、ITの専門家とほとんど変わらないような知見を持っている人もいます。こういう人たちが社長やIT責任者になることで、大きな変化が起きるかもしれません。

 では実際に1960年前後生まれの経営者を見てみましょう。サントリーホールディングス 代表取締役社長の新浪剛史氏(1959年生)、星野リゾート 代表取締役社長の星野佳路氏(1960年生)、MonotaRO(モノタロウ)の元会長で現在はLIXILグループ 取締役 代表執行役社長 兼 最高経営責任者(CEO)の瀬戸欣哉氏(1960年生)など、常識にとらわれない斬新な発想で優れた経営手腕を持ち、カリスマ性も兼ね備えた人たちです。さらに、ソニー 取締役 兼 会長の平井一夫氏(1960年生)、スクウェア・エニックス 元代表取締役社長の和田洋一氏(1959年生)、任天堂 元代表取締役社長の故岩田聡氏(1959年生)など、世界にその名を轟かせる人物も多いです。

社長の平均年齢

 大手企業の経営幹部や最高情報責任者(CIO)などと面識の多い人に話を聞くと、まだまだ現在の社長たちでは、デジタル変革(DX)の本質的な意味などをなかなか理解できないと言います。そこで、日経平均株価を構成している企業225社の社長の年齢平均を調べてみました。日経平均株価は、国内株式市場の代表的な株価指標の一つで、東京証券取引所市場第一部(東証一部)に上場する約2000銘柄のうち225銘柄を対象にしています。

 日本を代表する企業ともいえる日経225社の社長の平均年齢は、63.5歳でした。今の時代、この年齢でも十分に若いです。サッカー日本代表監督を務めた西野朗氏も63歳です。経済産業省が発表した「攻めのIT経営銘柄2018」の選出企業を調べてみると、社長の平均年齢は61.2歳で日経225社よりも少し若くなっています。企業トップの年齢が若くなるにつれ、ITへの理解力や吸収力が高くなる傾向なのでしょうか。

 その一方で、フォーブスジャパンが発表した「日本の起業家ランキング2018」では、66歳の起業家が1位になったことが大きな話題となりました。起業家マインドやITリテラシーに年齢は関係ないことが実証された形になりました。しかし、平均年齢を取ってみると2017年が40.8歳、2018年が42歳で、大手企業よりも15歳ほど若いです。俗に言う、1976年前後に生まれた「76世代」です。彼らの多くがITを活用したビジネスモデルを前提としており、ITについての洞察が鋭く、極めて高い利用技術を持った人もいます。サービスを開発する技術陣が経営を担っているケースも多く、完全なるITネイティブ企業といえるでしょう。

 76世代は、19歳の時(1995年)に「Windows 95」が登場しました。「使いやすさと性能を向上させたコンシューマ向けOS」というのが宣伝文句で、発売日に長い行列ができたのを覚えている人も多いでしょう。時を同じくして、米国では、Yahoo!やAmazonがサービスを開始しています。

 1996年には、ウェブブラウザ「Netscape Navigator 3.0」が大成功を収め、インターネットが一気に普及していきました。1997年には、Steve Jobs氏がApple Computer(当時)に復帰。日本では楽天が創業し、米国ではAuctionWebがeBayへと社名を変更しました。Excite、goo、Infoseek、ODNといった検索サイトも同時期にサービスを始めています。1998年にはGoogleが創業されました。

 1995~1998年の4年間は現在のIT産業が勃興したころであり、とても刺激的な時期だったといえます。最近は、76世代が経営を担う中堅企業に訪問することが多くなりました。こうした企業では、社長や経営役員のみならず、ひとり情シスであっても、高い技術レベルを持っている場合が多いです。近い将来、76世代が大手企業や中堅企業で中心的な存在になっていくと考えられます。その頃には、情報システム部門の概念や在り方が大きく変わっているではないでしょうか。

清水博
清水博(しみず・ひろし)
デル 執行役員 広域営業統括本部長
横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、アジア太平洋本部のディレクターを歴任する。

2015年にデルに入社。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。現在従業員100~1000人までの大企業・中堅企業をターゲットにしたビジネス活動を統括している。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。

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