米Oracleおよび日本オラクル(以下、オラクル)は、国内で自社運営のデータセンター(以下、DC)を間もなく開設するのに伴い、富士通の国内DC内に設置しているクラウドサービス「Oracle Cloud」を利用する顧客企業に対し、自社DCへ移行するように交渉を進めていることが、関係者の話で分かった。
3年近く前に大々的に発表された両社のクラウド事業提携
オラクルは2019年の初め、国内でOracle Cloudを提供するための自社DCを、「今年(2019年)半ばに東京、年末までに大阪に開設する」(日本オラクルのFrank Obermeier 取締役 執行役社長CEO)と明言していた。これに伴い、現在富士通の国内DC内に設置しているOracle Cloudの“間借り”運営状態を解消する方向だ。ただし、Oracle Cloudと富士通のクラウドサービスの連携は、両社のDCをつなぐ形で継続される見通しだ。
オラクルと富士通がクラウド事業で戦略的提携を発表したのは2016年7月6日。両社はこの提携に基づいて、富士通の国内DCに「Oracle Database Cloud Service」や「Oracle Human Capital Management(HCM)Cloud」をはじめとするオラクルの「Oracle Cloud Platform」や「Oracle Cloud Applications」の環境を設置。これらのクラウドサービスを、富士通から日本企業およびその海外拠点に提供し、顧客企業のシステムのクラウド移行を支援してきた。
発表会見では両社の当時の経営トップが登壇し、緊密ぶりをアピールしていた。この時の会見の内容については、関連記事を参照していただきたい(写真1)。

写真1:2016年7月6日の発表会見で言葉を交わす富士通の山本正已代表取締役会長(当時)と米OracleのLarry Ellison経営執行役会長兼最高技術責任者。Ellison氏は米国本社から衛星中継にて臨んだ
それがここにきて間借り状態を解消する方向となったのは、オラクルの戦略に基づくものとみられる。この点についての富士通との契約期間が、もともとオラクルが国内で自社DCを開設するまでだった可能性もある。筆者がそう考えるのには根拠がある。