キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、2019年度から3年間の同社グループの中期経営計画に関するメディア向け説明会を開き、セキュリティ事業を主軸に「ハコ売りから脱却し、コト売りに転換する」(エンドポイントセキュリティ企画本部長の山本昇氏)と表明した。関連ビジネスで2021年度に年商100億円を目指すという。
キヤノンマーケティングジャパン エンドポイントセキュリティ企画本部長の山本昇氏
中期経営計画で同社は、(1)キヤノン主要製品の収益維持、(2)ITソリューションを中心とした市場拡大領域における増収増益の実現、(3)成長を期待するキヤノン事業における収益基盤の確立――の3方針を掲げる。(1)はデジタルカメラやプリンタ、複合機など従来の事業領域、(3)はネットワークカメラや商業印刷、健康医療など成長性が期待される領域だが、計画達成に向けては(2)が重要になるとしている。
2021年度までのキヤノンMJグループの中期経営計画では、法人向けIT事業を成長の柱に置き、事業体制も再編させた
(2)の主要施策としては、SIサービスやITサービス、業務パッケージソリューション、セキュリティ、ビジネスプロセスアウトソーシングなどの商材について、大企業顧客向けは主にグループ会社のキヤノンITソリューションズ、中堅中小企業顧客向けは主にキヤノンMJが担当するよう再編した。セキュリティ関連では、2018年9月にキヤノンITソリューションズがスロバキアのセキュリティ企業ESETと合弁で日本法人「イーセットジャパン」を設立。また、ESETを含むキヤノンITソリューションズのセキュリティ事業をキヤノンMJに移管させている。
山本氏によれば、中期経営計画ではこうした再編を通じてESETの法人向けビジネスを今後の成長の柱に位置付ける。導入企業数は2008年度に10万社程度だったが、2018年度は39万社強に拡大し、特に1000ユーザー以上の大規模組織の導入が27%増になった。その一方、富士キメラ総研による市場調査でキヤノンMJは「中堅中小企業指向」「製品販売指向」との評価になり、同業他社の大半が「大手指向」「サービス提供指向」で成長しているため、同氏は「当社がハコ売りの会社と見られている」と、危機感をあらわにした。
セキュリティ事業ではソフトウェア販売が順調だった一方、市場調査会社の「ハコ売り」評価に危機感があるという
同社事業の成長において、従来のESETセキュリティソフトウェア製品の販売だけでは限界があることから、今後はソフトウェア製品をもとにしたサービスへ収益機会をシフトさせていくという。そこで第一段の取り組みとして4月22日に、クラウド型サンドボックス脅威解析サービス「ESET Dynamic Threat Defense」、エンドポイント脅威検知および対応(EDR)の「ESET Enterprise Inspector」を発売した。前者は標的型攻撃を中心とする脅威への即時防御、後者は検知された脅威の迅速な調査や対応を支援するソリューションになるとしている。
山本氏は、2019年度中にこれら製品をベースとする新サービスの提供を目指すと表明。当初は、専門家による脅威分析レポートなどになるが、EDRやセキュリティ監視センター(SOC)のマネージドサービスも検討していくとし、2021年度に年商100億円を目指すと述べた。
セキュリティ事業では、キヤノンMJグループとして「ハコ売り」から「コト(サービス)売り」にシフトさせていく方針を掲げる