山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国人に影響を与えた平成時代の日本

山谷剛史 2019年05月29日 07時00分

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 平成の後半には中国が急激に台頭し、経済力が逆転した。さらに最近ではITサービスが続々と登場し、まるで国全体で社会実験が行われているかのように、さまざまな新サービスや新製品がローンチされている。

 その一方で、平成というのは、日本が中国人に非常に大きな影響を与えた時代だったと評する記事があった。中国のニュースサイト「虎嗅網」による、平成の日本が中国人に与えた影響を論じた記事「平成三十年:改変中国人的不止是日本製造」である。これが興味深かったので、その一部を引用して紹介したい。基本的には原文に即して訳しているが、ところどころ筆者によるフォローを入れている。

 中国のネット上ではアニメや漫画やゲームなどを意味する「2次元」やオタク文化を示す「宅文化」という言葉を頻繁に見るようになった。「2次元」を消費する中国人は現在2億人とも言われ、その数は年々増えている。社会人になっても趣味を続ける人がいるのに加えて、さらに若い世代が興味を持ち始めているからだ。2次元はサブカルチャーとして認知されてきたが、今では一般化してメインカルチャーになろうとしている。

 日本の歴史と文化は中国の影響を多く受けているため、日本文化に対して中国民衆の共鳴を呼びやすいのが特徴だ。日本のアイドルやアニメ声優、ゲームクリエーターが中国にやってきて、歓迎される風潮が広がっている。

 平成初頭の1990年代は、廉価な出版物である海賊版が多く出回った時期である。また、1990年代後半から、PCやインターネットの普及が進み、マンガやアニメなどが中国に続々と入ってきた。当初はマイナーなサブカルチャーだったが、それがあっという間に大衆文化へと転じた。改革開放の影響もあって、日本のゲームや動画、マンガが大量に流入した。

 また、PCとインターネットの普及によって電子掲示板が登場し、2次元文化の交流を促進するコミュニティーが一気に広がった。近年、モバイルインターネットの発展により以前のような盛り上がりはないが、それでもまだ活発な活動を続けている。「80後(80后)」と呼ばれる1980年代生まれや、「90後(90后)」と呼ばれる1990年代生まれ、つまり現在の20~30代に共通する思い出は、「スラムダンク」「聖闘士星矢」「ドラゴンボール」「ちびまる子ちゃん」「ドラえもん」「ポケットモンスター」といったアニメや、「ファイナルファンタジー」「スーパーマリオブラザーズ」「ドラゴンクエスト」「三国志」「大航海時代」などのゲームである。加えて、「魂斗羅」「沙羅曼蛇」「高橋名人の冒険島」「バトルシティー」といったゲームも定番だ。「ときめきメモリアル」は多くの中国のオタクを夢中にさせた。中国人にとって、初めてのバーチャル歌姫だったといえる。

 中国のメディアや広告では、しばしば中国人に思い出深いゲームやアニメをオマージュとして利用することがある。安倍首相が選出されたとき、CCTV(中国中央電視台)は、「名探偵コナン」の「政治家の息子は政治家になる」というシーンを引用して批評した。CCTVですら日本のコンテンツを活用することがあるのだ。

 アニメやゲーム以外の影響もある。平成時代の日本はバブル経済が終わり、デジタル機器や自動車などに対する日本製品への印象は薄くなった。とはいえ、日本企業の部材はさまざまな製品に組み込まれているため、完全に回避することはできない。

 生活空間においては、無印良品やユニクロやセブン‐イレブン、ローソン、ファミリーマートが中国で幅広く展開され、日本式の生活スタイルが若い人々に伝わった。北京や上海などの大都市において、日本式コンビニなしの生活は想像できない。また、電子商取引(EC)の発達と、SNSを活用した転売目的の“爆買い”によって、日本製のさまざまな商品がより身近になった。

 平成の期間、日本発の新語が続々と中国に輸入された。「萌(え)」のほか、「人気」「料理」「攻略」「量販」という言葉も入ってきた。また日本のネット用語「草www」もネット用語として広まり、笑いや侮蔑の意味で使われるようになった。さらに、最近話題となったブラック労働の「996工作制(朝9時から夜9時まで週6日仕事をする)」問題では、「過労死」「社畜」という日本発の言葉がネットで飛び交った。

 記事の引用はここまでになる。平成時代を通して、中国では言葉から生活方式、カルチャーに至るまで、あらゆるところに日本が浸透したといえる。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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