今やITベンダーがこぞって注力しているデジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業。日本オラクルもこのほど専任の推進組織を設けて本腰を入れ始めた。その発表会見で説明を聞いていると、この事業に注力する同社ならではの思惑があるようだ。
DXに向けてデータドリブンなイノベーションを支援
記者会見に臨む日本オラクル執行役員クラウド事業戦略統括の竹爪慎治氏
「当社のクラウドへの移行に向けたビジネスは、およそ8割が企業の基幹システムに関連する領域だが、あとの2割はDXに関連する領域だ。今後はそのDX支援事業をさらに強化し、ビジネスの柱に育て上げていきたい」――。日本オラクル執行役員クラウド事業戦略統括の竹爪慎治氏は、同社が7月29日に開いたDX支援事業の取り組みについての記者説明会でこう切り出した(写真1)。
同社はDX支援事業のさらなる強化策として、このほど専任の推進組織を設置。その内容については、「日本オラクル、DX推進室を設置--データ駆動型のイノベーション創出を支援」をご覧いただくとして、本稿では、DX支援事業に注力する同社ならではの思惑について探ってみる。
冒頭で紹介した竹爪氏の発言は、図1を示しながら述べたものである。図の上半分は、まだオンプレミスでの使用が多い基幹システムのクラウドへの移行を促すもので、同社ではこの領域を「The Enterprise cloud」と呼んでいる。一方、下半分はDX支援に向けたクラウド活用で、「The Innovation cloud」と呼んでいる。ビジネス規模としては現状で、上半分が8割、下半分が2割というわけだ。
(図1)日本オラクルのクラウド戦略
では、同社におけるDX支援事業の戦略的な位置付けは、どのようなものなのか。それを示したのが、図2である。この図のポイントは、IaaSに「Oracle Cloud Infrastructure」、PaaSに「Autonomous Database」を据えた上で、IoTやAI/ML(人工知能/機械学習)、ブロックチェーンなどといったDX技術を活用することにより、「基幹システム向けをはじめとしたエンタープライズビジネスでこれまで培ってきたスキルやノウハウによる強みと、新たなDX技術でデータドリブンなイノベーションを支援していきたい」(竹爪氏)という。
(図2)日本オラクルにおけるDX支援事業の戦略的な位置付け