松岡功の「今週の明言」

中小企業のクラウド活用を促進する日本商工会議所の思惑

松岡功

2019-08-16 10:01

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、日本商工会議所の岩本敏男 IoT活用専門委員会委員長と、日本オラクルのPeter Fleischmann 専務執行役員の発言を紹介する。

「クラウドサービスを活用して中小企業の生産性をもっと上げていきたい」
(日本商工会議所 岩本敏男 IoT活用専門委員会委員長)

日本商工会議所の岩本敏男 IoT活用専門委員会委員長
日本商工会議所の岩本敏男 IoT活用専門委員会委員長

 日本商工会議所の IoT活用専門委員会委員長として、会員である中小企業のITおよびIoTの活用を促進する役目を担う岩本氏は先頃、Google Cloudが都内ホテルで開催した年次イベント「Google Cloud Next '19 in Tokyo」の基調講演に登壇し、「中小企業とクラウド」をテーマにスピーチを行った。冒頭の発言は、その際に同氏が強調したものである。

 岩本氏は2018年6月までNTTデータの社長を6年間務め、現在は同社相談役に就いているIT業界の重鎮である。同氏によると、日本商工会議所の IoT活用専門委員会委員長という役職も、3年前に同会議所の三村明夫会頭から依頼を受けて、要は中小企業のIT化促進の先導役を担った格好だ。

 「中小企業にとって今、最大の課題は人手不足。しかし、これは少子高齢化による日本の構造的な問題なので、そうした中でも生産性を上げていく手立てが必要だ。その手立てとして、私はITの活用を積極的に推進したい」

 さらに、同氏はこう続けた。

 「とはいえ、中小企業がITを活用する上では、低コスト、専門知識不要、高いセキュリティ、そして何よりも使いやすさが求められる。そうした条件をクリアできるITといえば、まさしくクラウドサービスだ。もともとクラウドサービスは中小企業にとってメリットが大きいものだが、これまでは中小企業側のITリテラシー不足やベンダー側のサポート体制も乏しかったことから、浸透しなかった。今後は日本商工会議所として、そうした不足を解消していけるように尽力したい」

 岩本氏がGoogle Cloudのイベントの基調講演に登壇したのは、会員数125万社および全国515の商工会議所とのコミュニケーションの円滑化を目的に「G Suite Enterprise」を導入したからだ。同氏は「G Suite Enterpriseを導入したことにより、商工会議所間の情報共有や定期的な会議をスムーズに行えるようになった。また、さまざまなオンラインセミナーなども実施できるようになった。今後はGoogleが実施しているデジタルスキルトレーニングに協力することで、全国の会員企業のITリテラシーを高めながら連携を一層強化し、ITを用いた経営の橋渡し役を担っていきたい」と、導入効果と今後の抱負を語った。

 また、さらなるクラウドの活用に向けた新たな動きとして、総務省や経済産業省の中小企業庁と連携して「全国中小企業クラウド実践大賞」も創設。経験豊富な岩本氏がリードするこうした活動に、大いに注目しておきたい。

Google Cloudのイベントの基調講演後、記者会見も行ったGoogle Cloud日本代表の阿部伸一氏(左)と岩本氏
Google Cloudのイベントの基調講演後、記者会見も行ったGoogle Cloud日本代表の阿部伸一氏(左)と岩本氏

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