米ZDNet編集長Larryの独り言

"人工人間"「NEON」がCESで話題--デジタル労働力の新たな未来に?

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-01-10 06:30

 サムスンの研究部門が出資するスタートアップNEONは「人工人間」を開発した。この取り組みは一部の人を怖じ気づかせたかもしれないが、CES 2020で大きな話題になった。しかしより重要なのは、これは仕事のあり方を変える上で、これまで欠けていたパズルの最後のピースかもしれないということだ。

NEON
デジタル労働力は一歩実現に近づいた。
提供:NEON via CNET

 読者がどの記事を読んだかによって、NEONは単なる新しいアバターであると思っている人もいれば、米CNETが書いたように「本物の人間のような外見と動作をする、計算で生み出された仮想的な存在」だと考える人もいるだろう。「CORE R3」と呼ばれるプラットフォーム上で作られたこの計算的存在は、感情や知性を見せる能力を持っているという。

 NEONは次世代のデジタルアシスタントではなく、時とともに独自の個性を身につける、ユーザーの「デジタルツイン」だと考えた方が適切だろう。NEONの人工人間は、経験から学ぶことができ、それぞれが個性を持つビデオチャットボットのようなものかもしれない。

 現実的な話をしよう。NEONほど上手に大きな話題を作ったスタートアップは、最近では記憶にない。面白いのは、NEONはサムスンの研究部門であるSamsung Technology and Advanced Research Labs(STAR Labs)の支援を受けている企業であるということだ。つまり、デジタルアシスタントとしては低調な「Bixby」を作ったサムスンだが、その関連組織がNEONでCES 2020の注目を集めたことになる。

 個人的には、NEONは無限のデジタルワークライフというよりは、「Second Life」のようなものになると予想している。NEONは人間のコピーを生み出し、人間の行動から学習させる技術を持っているようだ。

 ここでは、NEONが持つ社会的な意味や、プライバシーへの影響などをはじめとする文化面での内容は扱わないことにしよう。筆者はこれを、デジタル労働力の概念をもう一歩実現に近づける、企業で利用される可能性が高いビジネス向けの取り組みとして捉えている。

 NEONは、仕事のあり方を変革する上で欠けていた、パズルの最後のピースかもしれない。

 仕事に仮想の要素が導入され、よりデジタルになったことで、以下のようなことが起こっている。

  • チャットボットは実際にカスタマーサービスに使われるようになった。人間よりもチャットボットを好む顧客もいる。
  • RPA(ロボティックプロセスオートメーション)によって、企業の業務プロセスがデジタル化されつつある。これまで人間を必要としていた業務が、数行のコードで行えるようになった。最近では、ソフトウェアロボットによる、ストレスの少ないインテリジェントな自動化が可能になっている。
  • 人工知能(AI)と機械学習が企業のあらゆる部分に導入されつつある。意思決定も自動化されようとしている。
  • 今やデータやアナリティクスは企業の血液と言っていい存在になっており、意思決定を助け、より「処方的」な行動を可能にしている。
  • コラボレーションとトレーニングの分野で、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の存在感が増している。

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