新型コロナウイルスの蔓延は世界中で未曾有の混乱を引き起こし、こうして原稿を書いている今も状況は刻々と変化しています。この記事が掲載される頃には少しでも収束に向かっていることを願って止みません。
このウイルスが引き起こした混乱によって、人々の働き方も企業の事業継続に対する考え方も、一瞬の間に大きな変化を余儀なくされました。外出や都市間移動の自粛が求められる中で、在宅勤務を中心としたテレワークの必要性が急激に高まりました。
テレワークの環境については、2019年4月に施行された働き方改革関連法が大きな後押しとなり大手企業を中心に少しずつ整備され始めていたのは不幸中の幸いとも言えますが、こうした対応ができる企業は一部の限られた企業だけです。多くの企業にとって、テレワークに速やかに移行して通常と変わらないレベルで業務を継続することはとても難しいことだと思います。
筆者の所属するゾーホージャパンは、横浜本社からおよそ200km離れた静岡県川根本町に2016年からサテライトオフィスを置き、自らが本格的なテレワークを実践してきました。ここでは、自社でのテレワーク環境構築の経験やノウハウをベースに、天災など不測の事態における緊急時対応としての「今日からできるテレワーク」と、中長期的視点で事業を継続していくための事業継続計画(BCP)の一環としての「明日からのテレワーク」について、その導入のポイントを4回にわたって紹介していきます。
緊急時にまず考えるべきこと
緊急時対応でテレワーク環境を整えることから考えていきます。この際、最も大きな課題となるのは端末(PC、タブレット、スマートフォン)をどうするかということです。主な選択肢としては、以下の3つが考えられます。
- 職場で使っている端末を利用する
- テレワーク用の端末を新たに購入して配布する
- 従業員の私物の端末を使う(BYOD)
これらの選択肢について、メリットとデメリットを考えてみましょう。
職場のPCを持ち出すのは意外にハードルが高い?
まず、職場で使っている端末の利用についてですが、職場のPCを持ち出した場合、移動中の紛失や盗難により、機密情報が漏洩してしまうなどのリスクが高まるため、生体認証やICカード認証などを導入して職場で使う時以上にログインの条件を強固にし、ハードディスクの暗号化やバックアップなどの十分なデータ保護策を講じる必要が生じます。
また、会社のネットワークシステムが社外から接続できる仕組みになっているかどうかも問題となります。