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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

子どもがカメラによる家庭内監視に反対--中国で話題に

山谷剛史

2020-09-09 07:00

 中国で立て続けに2件、子どもが自室に設置されたネットワークカメラに抗議するニュースが話題となった。監視カメラとも防犯カメラとも言うが、ここではネットワークカメラで統一する。

 南京市で14歳の少年が警察に通報した。少年の部屋に父親がネットワークカメラを設置し、プライバシーを侵害しているからだという。警察が仲裁に来て騒動となったが、父親は一歩も引く様子がなく、子どもを監視する正当性を訴えていた。またほぼ同じ時期に、小学1年生の少女の勉強する様子を母親がネットワークカメラで監視し、スマートフォンアプリを使ってネットワーク経由で「勉強をちゃんとしろ」と口頭で注意したという話が注目された。微博(ウェイボー)によれば、この動画の閲覧数は3億6000万回、(表に出ている)コメント数では1万4000件を記録した。これはかなりの数だ。

 こうした家庭は珍しくない。もともと中国の学生の宿題量は非常に多く、長い間机と向き合っていないと終わらないほどある。最近ではPCやスマートフォンを使った宿題もある。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降は、オンライン授業を取り入れたことで、自室で勉強する時間が長くなった。そうした中、中国では子どもを監視するためにネットワークカメラが飛ぶように売れているという。ECサイト(電子商取引)の淘宝網(タオバオ)などで見ると、子どもやお年寄りの監視用と銘打ったネットワークカメラも販売されていて、人気店では月に1万台以上も売れている。

 論点は、家庭内でネットワークカメラを使って子どもを監視することの是非だ。スマートフォンがないとできない宿題がある半面、子どもがゲームアプリなどで遊んだり、クラスメートとチャットしたりする可能性があるから心配だという保護者の言い分もある。デジタル家電がない時代から、勉強に集中できずに遊んでしまう子どもに頭を悩ませる親はいる。だからといって子どもをネットワークカメラでずっと監視するのはいかがなものかと、子どもは訴えているわけだ。

 ウェイボーを提供する新浪(シンラン)は、ビッグデータで1万7000件におよぶ関連コメントについて統計を取ったところ、42.65%が保護者によるネットワークカメラの設置に不満を感じ、41.1%が中立的な考えだった。また他にも勉強が大変過ぎて悲しいとするコメントもあった。

 江蘇新聞がアンケートを取ったところ、10万票がプライバシーを侵害していると回答し、2万2000票が親の行為に理解を示した。中国新聞周刊が同種のアンケートを取ったところ、プライバシー侵害とする回答が1万5000票となったのに対し、ネットワークカメラの設置は意味があるとする回答は1400票だった。

 広州日報のアンケートでは監視は厳し過ぎるとする回答が3万5000票に対し、子どもは自分で管理できないので監督しなければならないという意見は5400票、親も子どもも自由な空間が必要だという回答が2万2000票となった。全体的に見れば「ネットワークカメラを設置し、宿題を管理するのはやり過ぎ」という意見が多数派となった。

 中国の教育者もおおむね同じ意見だ。国営メディアの新華網が引用した銭江晩報の記事によれば、「家庭内でのネットワークカメラの設置は子どもからプライバシーの侵害と反感を買うだろう。大人が子どもを信じなければ、子どもも他人を信じなくなるだろう。自立性が大事だ」と書いてある。

 筆者は以前、「『起立!』『着席!』で出席数を顔認証カウントする最新学校事情」という記事を書いた。学校に導入されたシステムで、教室に設置されたネットワークカメラと人工知能(AI)で学生全員の表情を逐次認識し、学生らの授業態度や理解度を把握して保護者と情報を共有するものだが、ネットワークカメラによる常時監視にやり過ぎという意見が結構あった。それでこの手の技術は立ち消えになったかというとそんなことはなく、幼稚園をはじめとするさまざまな教育現場で導入され始めている。

 ところで、中国ではネットワークカメラを街中に多数設置し、治安維持などの目的のために人々を監視しているのはご存じの通りだ。家庭内でのネットワークカメラ設置を否定する意見が広く共有されたが、街の様子を考えてコメントした人も少なくないだろう(そうした書き込みは表示されないので知る由もないが)。

 中国では、「国は家族」という言葉をしばしば耳にする。子どもの監視から市井の監視へと問題の認識が広がり、過度な監視に抗議の声を上げていくのか、はたまた何もかも監視されている状態を受け入れていくのか、気になるところだ。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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