GoogleやFacebookなどのネットサービス大手がニュースサイトで取り扱う記事について、配信元の報道機関に使用料を支払う動きが出てきた。これまでネットサービス大手が報道機関に記事の対価を支払う商習慣は基本的になかった。今回はこの動きを取り上げ、かねて抱いていた筆者の見解を述べたい。
ネットサービス大手のニュースに「記事ただ乗り」の声
複数の報道によると、Googleは先頃、記事の対価を支払う契約メディアが7カ国約400社になり、社数だけでは2カ月前から倍増させたことを公表した。この中に日本のメディアは含まれていないが、同社は現在、多くの国およびメディアと交渉を進めており、日本も含まれているという。
また、過去に掲載された記事は対象にならず、Googleが新たに始めたニュースサイトでの取り組みとなる。同社は世界のメディアに、今後3年間で10億ドルの対価を支払う方針を示しており、契約先をさらに拡大させる方針だ。
Facebookも2019年に米国で始めた新たなニュース配信サービスを、2021年に英国でも広げていくに当たり、記事の対価を支払う取り組みを始めた。有力な新聞や経済誌と契約し、記事のさまざまな楽しみ方を提案していくという。
こうした動きの背景には、報道機関がネットサービス大手に対し、「コストをかけて作成した記事に、ただ乗りしている」との不満を募らせてきた経緯がある。
遡れば、20年も前から論議されてきた話だが、今になって動き出したのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で企業が広告予算を絞り込む中、ネットサービス大手のニュースサイトに広告出稿が偏る傾向が出てきているからだ。
従って、今回の動きは、ネットサービス大手にとっては広告収入の減少に苦しむ報道機関を支援する意味合いもあるようだ。
こうした経緯について、筆者がこれまで取材してきた印象を述べておくと、かつてネットサービス大手がニュースサイトを設けた際、報道機関の多くは記事を無償で提供した。なぜ無償かといえば、そのニュースサイトを通じて記事がより多く読まれるようになれば、自社のサイトや新聞などの購読数もアップし、広告収入も増加すると考えたからだ。
それが結局、「軒を貸して母屋取られる」といったイメージになってしまった。ここから「記事のただ乗り」論が始まっているが、逆に言うと、最初に無償で記事を提供した報道機関の先見性に欠けた判断ミスが、今日のような事態を招いたわけだ。