2021年最初の「一言もの申す」。連載351回目となる今回は、産学界から上がる「国産クラウド育成」の声に、政府は何らかの対処をすべきではないか、と訴えたい。
筆者が「国産クラウド育成」の話を書きたいと思った理由
写真1:インターネットイニシアティブ 代表取締役社長の勝栄二郎氏
「日本政府はデジタル化に向けて国産のクラウドプラットフォームを育成すべきではないか」――。こう語るのは、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ) 代表取締役社長の勝栄二郎氏だ。国立情報学研究所(以下、NII)が先頃、設立20周年記念行事としてオンラインで開いた講演会のパネルディスカッションでの発言である(写真1)。
写真2:国立情報学研究所 所長の喜連川優氏
パネルディスカッションは、NII 所長の喜連川優氏がモデレーターを務め、ICT企業トップなど5人がパネラーとなって、1時間半にわたってさまざまなテーマについて議論が行われた(写真2)。その中で最も印象強かったのが、勝氏の冒頭の発言である。同氏は続けて次のように話した。
「デジタル化のベースとなるクラウドプラットフォームは、コストパフォーマンスを重視すればAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureが採用されるのはやむを得ないだろう。だが、日本として守らなければならないデータを安全かつ安心して継続的に活用していくためには、外資系ではなく国産のクラウドプラットフォームを採用すべきではないか。日本政府は国産クラウドプラットフォームをしっかりと育成する対策を講じてほしい」
ただ、この訴えは、国産企業であるIIJがクラウドプラットフォームを提供していることから、自社サービスの売り込みに聞こえてしまう面もある。
と思って聞いていると、勝氏の発言を受けた喜連川氏がさらに踏み込んで次のように述べた。
「大賛成だ。中央省庁が使用する『霞ヶ関クラウド』くらいはドメスティックに作ったほうがいいのではないか。NIIにおいても全国の研究機関のデータを一元的に管理して活用するクラウドプラットフォームを2022年に稼働開始するべく準備を進めているが、私の希望としてはできる限りドメスティックに作りたいと考えている。勝さんがおっしゃっているのは、日本として安全かつ安心して使える国産クラウドプラットフォームを継続して保持できるように、努力して経験を重ねる必要があるということだ」
喜連川氏のこの発言を聞いて、筆者は本連載で「国産クラウドプラットフォーム」についてぜひ書きたいと思った。