「デジタルの民主化」実現するノーコードの可能性と限界--主な製品と4分類 - (page 2)

石田健亮 (ドリーム・アーツ)

2021-05-17 07:00

ノーコードツールの分類

 ノーコードツールと呼ばれる製品は、構築できるアプリケーションや構築するユーザーの知識レベルによって特定業務型、ウェブ/スマホアプリ型、データストア型、データベース+ワークフロー型に分類することができる。

ノーコードツールの分類と代表的なサービス
ノーコードツールの分類と代表的なサービス

 グローバルで単にノーコードツールといえば、ウェブ/スマホアプリ型を指していることが多い。これらは、ウェブアプリケーション、スマホアプリを作成するためのプラットフォームだ。画面のデザインとそのデータを格納するデータベースの定義をウェブブラウザ上で行うことができ、サーバーの構築や管理をすることなく単体のアプリとして十分に使用に耐えるクォリティのアプリをリリースすることができる。社内の業務のデジタル化ではなく、個人(toC)向けに公開するアプリを構築する場合に最適だ。

 ウェブ/スマホアプリ型の対象は依然としてITの専門家だ。圧倒的な生産性を実現するための開発ツールとして利用されることが多い。

 特定業務型は、ECサイトの構築や、営業支援システム(SFA)、 ITサービス管理(IT Service Management:ITSM)など、特定の業務に特化した機能やコンポーネント、データベースのスキーマがあらかじめ用意された製品だ。最低限の設定ですぐに利用することができ、管理すべき項目をフォームとして定義したり、カスタムアプリケーションをノーコードで構築する機能を備えている。

 データストア型は最も簡単に使えるタイプで、ウェブブラウザ上でフォームを作成し、フォームに入力することでデータを蓄積していくタイプだ。Excelを共有して書き込んでいるような業務をそのままウェブ化することができる。デジタルの民主化にとって強力なツールではあるが、複雑な業務の実現は困難であるし、大企業で必要となるような細かなアクセス権限の管理や大量のデータの扱いは苦手なことが多い点に注意が必要だ。

 データベース+ワークフロー型は、フォームの作成と、データのフローの作成がウェブブラウザ上で行える。企業における業務は大抵の場合、複数の部門でデータがまわり、それぞれで追記、編集、改訂、承認が行われるワークフローが必要となる。こうした業務をノーコードで実現できるのがこのタイプの製品である。企業のビジネスプロセスのデジタル化、仕組み化することによる生産性の向上を目的に大企業で導入されるケースが多い。

 複雑なアクセス権限の管理や大量データの扱いに長けるが、特別にプログラミングの知識がないユーザーでも自らの業務をデジタル化する“デジタルの民主化“を同時に実現できる点が特色だ。

 ノーコードと呼ばれる製品は、いずれもコードを書くことなくアプリケーションを構築することができるが、実現したいアプリケーションのタイプ、実現するユーザーの属性、IT専門知識の有無によって製品を選択しないと、ノーコードと言っても幅広く適用範囲には大きな違いがあることに注意が必要だ。

 次回は、ノーコードツールのうち代表的な「SmartDB」と「Bubble」を取り上げ、実際に業務をデジタル化してみることで、ノーコードツールの特色を具体的に紹介し、そのメリットと限界を見ていく。

(第2回は5月下旬にて掲載予定)

石田 健亮(いしだ けんすけ)
ドリーム・アーツ 取締役執行役員 CTO
1998年、東京大学工学部機械情報工学科卒。東京大学大学院在学中の2000年4月にドリーム・アーツに入社。製品開発部長を経て、新規事業推進室にて現在3万9000店舗以上に利用されている「Shopらん」の企画開発を手がける。2015年1月、最高技術責任者に就任。「ものづくりの力」を強化すべくエンジニアの育成にも注力している。

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