日立、IoTデータ基盤を活用したオフィスを公開--新しい働き方の実験場に - 16/18

國谷武史 (編集部)

2021-08-24 17:19

 日立製作所と日立ビルシステムは8月24日、ハイブリッドワークスタイルを見据えたオフィスとそれを支えるIoTデータ基盤やアプリケーションなどの取り組みを公開した。テレワークやオフィスワークを柔軟に組み合わせた新しい働き方の実験場と位置付けている。

 日立製作所は、2020年11月にオフィスビル向けのIoTプラットフォーム「BuilMirai(ビルミライ)」を開発、日立ビルシステムが東京都千代田区の本社ビルと同足立区の亀有総合センターにBuilMiraiを導入し、2021年8月2日に運用を開始した。ここでは社員向けのアプリケーション「BuilPass(ビルパス)」も利用し、業務効率や生産性の向上と安全性に配慮したハイブリッドワークスタイルの在り方を実証していくという。

「BuilMirai」の構成イメージ
「BuilMirai」の構成イメージ

 日立は「Lumadaアライアンスプログラム」で日本マイクロソフトと協業しており、BuilMiraiはMicrosoft Azure上に構築されている。オフィスビルの空調や照明、昇降機といった各種設備のデータ、電力などの各種エネルギーに関するデータ、映像監視や入退室などの各種システムのデータを一元的に収集、分析することによりオフィスビルの稼働や利用の状況を可視化する。ビル単位あるいは複数のビルの統合的な管理、監視による効率化と、データ分析に基づく快適、安全な空間の提供、ビル運営品質の維持・向上が期待されるとしている。

 日立ビルシステムは、BuilMiraiの導入に合わせて本社ビルと亀有総合センターの一部をリニューアルした。同社人事総務本部 総務部長の高橋邦久氏は、「日立グループとしてはコロナ禍により在宅勤務を原則としているが、当社はビルの現場を支える事業特性から在宅勤務の難しい社員が約6割に上る。ワークライフバランスや業務効率など目指すこれまでの働き方改革の取り組みをさらに進め、在宅勤務を推進しつつ職種や業務に合わせた執務環境を実現するプロジェクトを2020年7月に立ち上げ、まずは本社エリアのリニューアルを行った」と説明した。

日立ビルシステム 人事総務本部 総務部長の高橋邦久氏
日立ビルシステム 人事総務本部 総務部長の高橋邦久氏

 プロジェクトでは、若手社員を中心とする40人のメンバーが社内ワークショップや職場アンケートを通じて、オフィスへの出社を前提としない中でも自分たちが働きやすい、働きたいと感じる本社(マザーオフィスと呼称)や営業所、サテライトオフィスの執務環境の在り方を検討した。マザーオフィスには、スキルアップやロケーションフリー、コミュニケーション、リフレッシュなど、営業所およびサテライトオフィスでは事前に利用可能か分かることやコミュニケーション、交流の仕組みなどが期待される要素に挙げられた。

日立ビルシステム 本社ビルリニューアルプロジェクトでの検討内容
日立ビルシステム 本社ビルリニューアルプロジェクトでの検討内容

 プロジェクトに基づく最初の取り組みが本社ビルと亀有総合センターのリニューアルになる。本社ビルには、目的に応じて使い分けができる5つのエリア「カレッジ」「ラウンジ」「ステージ」「ビレッジ」「チャージ」を設けた「グリーンパーク」を設置した。亀有総合センターでは、食堂を改装して新たに「カフェ」「ラウンジ」「バー」「VIP」の4つのエリアを開設している。日立ビルシステムは今後、本社ビルと亀有総合センターでの成果を生かして、全国約300カ所の事業拠点でこの取り組みを順次展開していくという。

 BuilMiraiでは、例えば、フロアごとのリアルタイムな人流や混雑状況、監視映像などのデータから「3密(密集、密接、密閉)」の発生を回避したり、設備異常への迅速な対応を図ったりすることができ、あるいは出社人数と電力消費量の相関分析や、1人当たりに要する空調機器での消費電力量の把握などを通じてエネルギー効率を改善するようなことが行える。

データ分析の一例
データ分析の一例

 BuilPassはBuilMiraiと連携し、社員がモバイルアプリを通じて事前にオフィスの混雑状況などを把握したり、施設予約を行ったりできるほか、コミュニケーション機能やイベントなどの情報配信、ビル管理者への設備故障などの通知などもできる。システム連携で入退室管理なども行えるようになる。

社員のコンタクトアプリケーションと位置付ける「BuilPass」
社員のコンタクトアプリケーションと位置付ける「BuilPass」

 日立製作所は、BuilMiraiとBuilPassを「ビル共通プラットフォーム」として国内外のオフィスビルデベロッパーなどへ展開していくほか、Lumadaアライアンスプログラムなどを通じた提携企業との連携ソリューションの開発、提供の拡充も進める。

日立製作所 ビルシステムビジネスユニット SIB推進本部 プラットフォーム開発部長の赤津昌幸氏
日立製作所 ビルシステムビジネスユニット SIB推進本部 プラットフォーム開発部長の赤津昌幸氏

 同社ビルシステムビジネスユニット SIB推進本部 プラットフォーム開発部長の赤津昌幸氏は、「コロナ禍においてオフィスビルには、新たな価値の提供を通じたテナント契約の維持と、人材不足の中での効率的な設備管理などが求められている。BuilMiraiは、オープンプロトコルへの対応によりマルチベンダーのシステムと接続でき、多種多様なビルの設備を考慮したデータモデルをデータ分析に活用する。また、オープンAPIを実装しており、将来的にさまざまなクラウドサービスなどとの連携も可能にしている」と説明した。

 BuilMiraiでは、マイクロソフトのAzureをサービスの稼働基盤に、Power Platformを各種データ分析などに採用する。BuilPassは、日立が提携するアイルランドのベンチャー企業SpaceOSが開発している。また、日本マイクロソフトも独自にスマートビル領域に向けたソリューションやエコシステムを展開している。赤津氏によれば、マイクロソフトの施策と日立およびマイクロソフトの協業について現時点で関係性はないものの、「今後取り組みを広げていく上でさまざまなエコシステムとの連携も模索していきたい」と述べた。

BuilPassアプリの画面。イベント告知のイメージ

BuilPassアプリの画面。イベント告知のイメージ

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