Microsoftとコンサルタント会社KPMGは、量子力学に着想を得た最適化手法を「Azure Quantum」クラウドサービスで利用し、企業が抱える一般的な問題を解決しようと協働している。
コンピューティング上の複雑な問題を解決できる(そしておそらくは今日の暗号技術の根底を揺るがす)強力な量子コンピューターが実現するのはまだ何年も先だと考えられている。それでも、GoogleやIBM、Honeywell Quantum Solutions(HQS)、Cambridge Quantum(CQ)をはじめとする多くの企業の取り組みによって着実に進歩を遂げている。
MicrosoftとKPMGは、「Microsoft Azure」クラウド上の今日のハードウェアを用いて量子コンピューティングのエミュレーションを実行することで、量子最適化問題をソフトウェアによって解決しようと力を合わせている。KPMGはこの取り組みを「QIO」(Quantum-Inspired Optimization:量子に着想を得た最適化)と呼んでいる。
Microsoftはブログで、「量子力学的な作用を古典的コンピューター上でエミュレートすることで、古典的ハードウェア上で稼働するQIOアルゴリズムの開発につながった」と述べている。
「これらのアルゴリズムによってリサーチャーや開発者、ソリューションプロバイダーは、量子アプローチによるメリットを今日の古典的ハードウェアを用いて享受でき、従来からあるアプローチよりも速い実行速度を達成できるようになる」(Microsoft)
Microsoftは、Azure Quantumを量子ソリューション向けのフルスタックのパブリッククラウドエコシステムだとしており、KPMGのような提携パートナーがこのクラウドを利用して、ビジネスにおける課題を解決するための量子コンピューティングの最適化ツールを評価できるようになると述べている。
KPMGのQuantum Hubにおけるグローバル責任者Bent Dalager氏は、「Azure Quantumプラットフォームによって、同一のコードを利用して、さまざまなソルバーのアプローチを検討できるようになるため、作業のやり直しを最小化できるとともに、効率化を図れるようになる」と話す。
「初期プロジェクト群の共通の目標は、Azure Quantumを用いて、一般的な業界で見かける最適化問題に対する解決策の青写真を作り出し、それをより多くの顧客に向けて大規模に提供することだ」(Dalager氏)
両社によると、初期段階の協働プロジェクトでは、金融サービスポートフォリオの最適化や、通信サービスのフリートの最適化に向けたベンチマークソリューションに注力する。結果は数カ月で明らかになるという。
Microsoftは、AmazonやGoogle、IBM、IonQ、NVIDIAをはじめとする企業と量子コンピューター分野で競っている。Constellation Researchによると、240社を超える企業が85億1200万ドル(約9700億円)の投資を集めているという。
また各企業は、さまざまな取り組みを推進している。コンサルタント会社AccentureもIonQと協力している。IBMは12月に入って、新たな量子プロセッサー「Eagle」の概要を明らかにした。Eagleは127キュービットを実現している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。