シスコ、2022年度の中小企業向け事業戦略--ビックカメラとの協業など

渡邉利和

2022-01-14 14:00

シスコシステムズ 専務執行役員 アジア太平洋地域 スモールビジネス統括の鎌田道子氏
シスコシステムズ 専務執行役員 アジア太平洋地域 スモールビジネス統括の鎌田道子氏

 シスコシステムズは1月13日、2022年度の中小企業向け事業戦略を報道関係者向けに説明した。専務執行役員 アジア太平洋地域 スモールビジネス統括の鎌田道子氏は日本国内の中小企業向け事業を担当していたが新たにアジア太平洋(APAC)地域全体を統括する立場となり、オンライン会議ツール「Webex」などのコラボレーション製品事業を担当していた執行役員 SMB・デジタル事業統括の石黒圭祐氏が国内の中小企業向け事業を担当することになった。

 鎌田氏はまず、「約2年半にわたって『マネージドサービスの加速』『オンラインビジネスの成長』『クラウドビジネスの伸長』の3つの柱で事業を推進してきた」と語った。この方針は現在の新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行が全く想定できない時点で策定されたものであり、当時は東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた政府のテレワーク推進の方針を踏まえてのものだったという。

中小企業向けの3本柱の戦略
中小企業向けの3本柱の戦略

 中小企業の事業戦略については、「インバウンドの顧客が増加することに伴う事業成長とデジタル変革(DX)の加速」「オリンピック開催期間中のテレワーク推進に対応するための環境整備の加速」を想定して立案したものだったが、コロナ禍によって「われわれが全く想定していなかった形で市場の動向が大きく変化した」(鎌田氏)が、上述の3つの柱は「想定以上に大きな転換を迎えた」とする。

 具体的には、マネージドサービスに関しては、顧客先に直接訪問しての営業活動や機器設置などといったオンプレミスシステム導入に伴う活動が困難になったこともあって利用が急増。オンラインビジネスに関しては、テレワークの加速によって個人市場でも環境整備が進んだ。また、中小企業向けでもクラウド関連の事業が大きく伸長しており、直近の四半期ではクラウド関連の売り上げが6割近くとなり、それ以前に約8割を占めていたオンプレミス/システムインテグレーシ(SI)事業を逆転するに至っているという。

 こうした状況を、鎌田氏は「われわれが当初掲げた戦略がコロナ禍でさらに加速した」と振り返った。中小企業向け事業はコロナ禍を受けて世界全体でそれ以前よりも成長しているとのことだが、世界やAPAC全体と比べても日本の成長率はさらに高く、特に日本の中小企業向け事業におけるクラウド関連の売り上げが急速に伸びている。

コロナ禍前からの中小向け市場の成長。アジア地域平均に比べて日本の成長率は大幅に高く、特にクラウド関連の売上げは顕著な成長を示している
コロナ禍前からの中小向け市場の成長。アジア地域平均に比べて日本の成長率は大幅に高く、特にクラウド関連の売上げは顕著な成長を示している

 鎌田氏はその理由について「(上述の)3つの柱に対してコロナ禍の前から整備していた」「特に『Meraki』製品に関して販売シフトの戦略を採っていた」ことが市場動向にマッチしたと分析している。この結果を踏まえ、同氏は日本の成功事例を踏まえてアジア地域全体に展開する一方、日本国内に関しては石黒氏を中心に「ネットワーク/セキュリティでできた日本の基盤を、コラボレーションやハイブリッドワークといった次のクラウドシフトへ加速していきたい」と語った。

 続いて、日本国内での中小企業向け戦略について石黒氏が説明。同氏は戦略の柱として「既存パートナーとの連携強化」「オンライン体験の拡充」「市場への新たなルート」の3つを挙げた。パートナーとの連携に関しては、従来はSIという形が主だったが、マネージドサービスなどの新たなサービス形態を拡大していく方向となる。

日本国内での中小企業向け重点戦略
日本国内での中小企業向け重点戦略

 また、オンライン体験の拡充では、買収によって獲得したオーディエンスエンゲージメントツール「Slido」をWebexに統合して安価に提供するなどの取り組みを展開。新たなチャネルの開拓については、「現在交渉が最終段階にある」(石黒氏)というビックカメラとの協業が紹介された。これは、同社が持つ法人営業部隊や実店舗で製品展示などに期待するものだという。

ビックカメラのとの協業。従来のSIルートとは異なる、顧客が自分から製品などを探しに行く際に最初に思い浮かぶ購入先として、全国レベルで高い知名度を持つ小売り事業者との連携を考えたという
ビックカメラのとの協業。従来のSIルートとは異なる、顧客が自分から製品などを探しに行く際に最初に思い浮かぶ購入先として、全国レベルで高い知名度を持つ小売り事業者との連携を考えたという

 製品面でも、マネージドサービス型ソリューションの拡充や新製品/新機能の投入が続けられているという。その具体例として、同氏は未発表の新端末「デスクミニ」も初公開した。自宅でオンライン会議に参加する用途などを想定した一体型の端末で、Webexのほかにも「Microsoft Teams」や「Zoom」といった他社ツールでも利用できるという。

 最後に石黒氏は「中小企業のDX化をいかに推進するのか」「ハイブリッドワークをどう実現していくのか」を今後の目標に掲げた。

シスコシステムズ 執行役員 SMB・デジタル事業統括の石黒圭祐氏。同氏が手にする「デスクミニ」は、円筒型の本体とディスプレイパネルを組み合わせた一体型の端末製品。持ち運びを想定し、しっかりしたキャリングハンドルが装備されている
シスコシステムズ 執行役員 SMB・デジタル事業統括の石黒圭祐氏。同氏が手にする「デスクミニ」は、円筒型の本体とディスプレイパネルを組み合わせた一体型の端末製品。持ち運びを想定し、しっかりしたキャリングハンドルが装備されている

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