ラクス、ビズリーチ、弁護士ドットコムの3社は1月27日、ペーパーレス化を通じて企業の生産性向上と柔軟な働き方の実現を目指す「紙に縛られない働き方プロジェクト」を発足させたことを明らかにした。3社は同プロジェクト実現に取り組む企業を募集して、サービス無償提供などによる支援や取り組み事例の発信、調査実施による課題の顕在化と発信に務める。
ラクス 取締役 クラウド事業本部長 本松慎一郎氏はプロジェクトを始動した理由として、「紙書類の存在が業務改善のボトルネックだと感じている。さらにコロナ禍により半強制的に新しい働き方への対応を強いられたが、『柔軟な働き方の選択肢』の実現を阻害する紙書類の課題が顕在化した1年だった。ペーパーレス化が業務デジタル化の第一歩」だと説明した。
(左から)ビズリーチ 取締役 HRMOS事業 事業部長 古野了大氏、弁護士ドットコム 取締役 クラウドサイン事業部長 橘大地氏、ラクス 取締役 クラウド事業本部長 本松慎一郎氏、中小企業庁 経営支援部経営支援課 課長補佐 小池明氏
2021年9月にラクスが実施したアンケート調査によれば、回答企業の7割が業務のデジタル化が進んでいないと感じている。従業員1000~1999人の企業は約52.6%だが、300人未満の企業は約72.1%と20ポイントの差が生じた。
その阻害要因として筆頭に上がるのは、誰もが思い浮かべる紙書類・押印による商習慣。紙業務に費やす時間が月10時間を超える割合は32%だが、営業部門・営業企画部門は24%、総務部門や人事部門といったバックオフィスは37.7%と差が生じている。
さらに100%テレワークもしくはテレワーク実施中の企業に所属する413人のうちの約84.5%は、紙書類が理由で出社した経験を持つという。ラクス 本松氏は「デジタル庁発足などデジタル化の機運は高まりつつあるが、1社単独でペーパーレス化に取り組むのは限界がある」とプロジェクト発足の背景を説明する。
プロジェクト発足メンバーの1社であるビズリーチは、人材活用プラットフォーム「HRMOS(ハーモス)」を手掛けている。ビズリーチ 取締役 HRMOS事業 事業部長 古野了大氏は「紙を使った人事業務が多く残り、紙からデータを集める・転記するといった作業に多くの時間を費やしている。プロジェクトを通じて、多くの企業の生産性向上、人事部門が従業員と向き合って支援する場面に尽力したい」と解説した。
電子契約サービス「クラウドサイン」などを提供する弁護士ドットコム 取締役 クラウドサイン事業部長 橘大地氏も「中小企業は今(デジタル化から)取り残されている。賛同企業とともに実体を変えなければならない。それがわれわれの仕事だ」と意気込みを語った。
プロジェクトでは、月10時間以上の紙業務に縛られた32%の企業を20%以下へ軽減させ、経費精算業務におけるシステム導入率52.7%を70%以上、電子契約の利用率6.8%を20%以上、採用管理業務におけるシステム導入率32.3%を45%以上、評価管理業務におけるシステム導入率36.3%を50%以上へ向上させることを、3年程度で目指す。
トークセッションではプロジェクト実現後の将来像が語られた。
ビズリーチの古野氏は「われわれは(デジタル化の先にある)人事データを重視している。データをつなぎ合わせることで、人事部門の業務負荷軽減にとどまらず、従業員のより良い働き方、活躍する場を作れる」と語った。
弁護士ドットコムの橘氏は個人的意見と前置きしながら、「地方の過疎化問題を解決するのがペーパーレス化。実現すれば東京や大阪といった都市群に集中せず、地方に在住しながらニューヨークの企業で働くことも可能」とペーパーレスの意義を強調した。
ラクスの本松氏は「(ペーパーレス実現後に必要なのは)業務効率化の実現。さらにコミュニケーションのデジタル化、働く場所のデジタル化につながる。当然100%実現可能ではないものの、海外ともデジタル空間内でビジネスやコミュニケーションを取り合うことは遠い未来ではない。そんな将来を個人的にだが、楽しみにしている」と予見した。
ゲストとして参加した中小企業庁 経営支援部経営支援課 課長補佐 小池明氏も「古野氏が述べていたデータに付加価値を付与するのは経営の可視化にもつながる。ウィズコロナ時代における経営はデジタル技術を活用した『ウィズデジタル』を中小企業の方々に取り組んでほしい」とコメントを寄せた。
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