Eclipseを基盤にウェブもNotesも取り込むリッチクライアントを提供するIBM:変容するリッチクライアント(3) - (page 2)

柴田克己(編集部)

2006-03-18 00:00

 IBMの言う「リッチクライアント」の実現において、同社がオープンソース化し、以後プロジェクトで開発が続けられている「Eclipse」の果たす役割は極めて大きい。オープンスタンダードの世界で、リッチクライアントの基礎的なフレームワークが標準化されることによって初めて、同社の理想とする「あらゆるアプリケーションのスマートな統合とサーバによる一括管理」が可能になるためだ。また、Javaで作られているために、クライアントのOSを問わず、共通のルック&フィールや操作性を提供できる点も見逃せない。

日本IBM、ソフトウェア事業ロータス事業部事業推進モバイル製品企画課長の首藤薫氏

 「WMCが究極的に目指すのは、企業アプリケーションのすべてをその上で管理し、サーバ側で利用状況をコントロールすること。Visual Basicなどで作られた従来のアプリケーションを管理し、動作させるためのプラグインも用意されている。JavaがベースとなっているWMCなら、Windows、LinuxといったOSの違いやハードウェアデバイスの違いを吸収し、ユーザーに対しては同一のルック&フィールを提供することが可能だ」(日本IBM、ソフトウェア事業ロータス事業部事業推進モバイル製品企画課長の首藤薫氏)

 リッチクライアントの実現にあたって、IBMがJavaベースのEclipseをその基礎として利用するのは自然な流れと言えよう。

融合するNotesとWorkplace

 IBMでは先ごろ、今後のNotes/DominoとWorkplaceの統合に関するロードマップを発表した。現状でも、WMCのプラグインとしてNotesクライアントを呼び出すといった形での連携は実現されているが、2007年にリリース予定の次期Notesクライアント「Hannover」では、Notesクライアントの各機能がJavaコンポーネント化され、WMC上で統合される。Notesクライアントは、ついに技術的にもWorkplace製品群と完全に融合することになる。

 Notes/Dominoのアーキテクチャ的な特徴であった、クライアント側でのデータストアやシンクロナイズといった機能は、Workplace Client Technology、つまりWMCにおいても継承されており、これまでにNotes/Domino上で蓄積してきたデータやアプリケーションの資産は問題なく引き継げるという。

「Workplaceのテクノロジーを取り入れて、Notesが進化するととらえてほしい。Notesの登場以降、その基盤に相当するものは世の中に出てこなかった。WMCのリッチクライアントとしての基盤は、アプリケーションの動作の仕組み、管理の仕組み、レプリケーションの仕組みのいずれも非常にNotes/Dominoに似ている。Hannover以降は、これらをオープンスタンダードな技術の上で利用できるようになる」(吉田氏)

 アプリケーションの開発モデルも大きく変化することはないという。現状、Workplaceの開発環境としては、Java開発者向けの「Rational Application Developer」、ビジュアルなフォーム開発ツールである「Workplace Designer」、エンドユーザーのカスタマイズツールである「Workplace Builder」の、大きく3つのツールが提供されている。現状のNotes/Dominoの開発環境である「Domino Designer」はWorkplace Designerに相当するため、Workplaceの環境では、上位と下位のそれぞれに個別のツールが提供されている形になる。「Workplaceは開発モデルにおいても、Notes/Dominoの流れを大きく引き継いでおり、統合によって開発者の選択肢はさらに広がる」(吉田氏)という。

 なお、従来のクライアント/サーバ型の環境を求めるユーザーに対しては、Hannoverの登場以降も、Notesクライアントのバージョンアップ版を引き続き提供していく計画という。

 Javaというオープンスタンダードの上で、これまでバラバラに存在していた企業内アプリケーション、さらにはNotes/Dominoのフロントエンドを統合し、一元管理していこうとするIBMのリッチクライアントは、エンドユーザーのみならず、システム管理者や開発者に対しても大きなメリットをもたらすことを目指す。

2007年にリリース予定の次期Notesクライアント「Hannover」は、Workplace Client Technologyに基づき、Javaコンポーネント化された各機能を自由に組み合わせて利用できるようになる。


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