Yahoo! User Interface Library(以下YUI)は、米Yahoo!が開発しているJavaScriptライブラリである。オープンソースのBSDライセンスに基づいてリリースされており、無償でAjaxアプリケーションの構築に利用することができる。この特集では、7月末にリリースされた最新バージョン2.3.0に追加されたコンポーネントと、YUIの基本について解説していく。
2007年7月31日、Yahoo!からYUI2.3.0がリリースされた(リリースを伝える開発者ブログのエントリ)。このバージョンでは、新たに6つのコンポーネントが追加された。初回はこれらのコンポーネントの概要を述べて、次回以降でそれらについて具体的な解説を加えていきたい。
なお、リリースされたコンポーネントのほとんどはベータ版(beta)もしくは実験的な(experimental)リリースなので、対応するブラウザや利用条件に配慮した上でご利用いただきたい。
Color Picker Control - beta
画面上の表示色を選択するコンポーネントで、Webブラウザ上のGUIで色を選択すると、その色を表示するためのFFFFFFなど16進数6桁の値を得られる。機能はシンプルだが、画面のカスタマイズ機能を充実されたアプリケーションの構築には欠かせないコンポーネントとなるだろう。
Rich Text Editor - beta
フォントの種類や大きさなど書式を変更できるテキストエディタである。HTMLフォームの
IEの一部のバージョンではテキストを選択できないなどのバグが確認されているが、このコンポーネントのドキュメントの「Known Issues in RTE 2.3.0」に掲載されているCSSを追加設定すると解決できるという。該当するバージョンを用いているユーザーは注意していただきたい。
YUILoader Utility - beta
YUIの個別のライブラリを、文字列の名称で指定してロードできるようにするユーティリティである。別のJavaScriptライブラリであっても、モジュールとして名称を指定しておけば、同様にロードが可能となる。
登録済みの名称は、たとえば、前述のRich Text Editorは"editor"、Calendar Controlは"calendar"という具合である。詳細はドキュメントの「YUI Module Names」を参照していただきたい。
ImageLoader Utility - experimental
画像が用いられたWebページをロードする際、画像のみを後からロードできるようにするユーティリティだ。画像が用いられたWebページは、Webブラウザの種類にもよるものの、画像のロードが完了するまでページ全体が表示されないことがある。このユーティリティはそうした事態を改善するねらいで開発された。
YUI Test Utility - beta
JavaScriptアプリケーションのユニットテストを行うためのクラス群で、TestSuite、TestRunner、Assertなど、さながらJUnitのそれと良く似た機能や名称を持つクラスが定義されている。また、ユーザーのWebブラウザ上での操作をシミュレートするクラスも定義されている。
Base CSS
YUIのCSSライブラリが、基盤部分の設定を行うCSS Base、フォントの種類や大きさを決めるCSS Fonts、Webブラウザの画面を複数の領域に分割してコンテンツを表示させるCSS Grids、そして設定をリセットするReset CSSにまとめられた。
CSS Gridsで指定可能なレイアウトのうち、33%-33%-33%というレイアウトにおいて大きなスワップが発生することが確認されており、メーリングリストでそれに対処するためのパッチが公開されている。利用を考えているユーザーは確認していただきたい。
YUIのダウンロードとWebブラウザの設定
YUIはJavaScriptライブラリなので、実行環境となるWebブラウザにおいてJavaScriptを実行できるように設定しておかなくてはならない。職場などの利用環境ではセキュリティに配慮してJavaScriptの実行を許可していない場合もあるので、設定が可能かどうかをあらかじめ確認しておいていただきたい。また、YUIが対応しているWebブラウザはGraded Browser Supportに掲載されているので、こちらも合わせて確認しよう。
YUIが利用可能であれば、YUIの本体をダウンロードサイトへのリンクからダウンロードしよう。これをクリックするとSourceForge.netにリダイレクトされ、自動的にZIP形式のファイルがダウンロードされる(容量は約12MB)。もしダウンロードが開始されない場合は、「this direct link」というリンクをクリックしてほしい。
ダウンロードが完了したら、ZIPファイルを展開しよう(容量は約40MB)。このとき、ドライブの空き容量が十分に確保されていることを事前に確認しておいていただきたい。
これでYUIの実行環境が整った。次回から、YUI2.3.0で追加されたコンポーネントについて解説を加えていきたい。JavaScriptライブラリによるAjaxアプリケーションの世界を探検していこう。