Notesマイグレーションはきっかけのひとつ
では、コラボレーション基盤について、マイクロソフトはどのようなビジョンを持っているかについて見ていこう。
インフォメーションワーカービジネス本部でIWソリューションマーケティンググループのエグゼクティブプロダクトマネージャを務める昇塚淑子氏は、「MOSSの優位性、運用管理性などを正しく理解していただくためのドアオープナー(きっかけ)のひとつとして、Notesマイグレーションがある」と話す。
MOSSがNotes/Dominoの完全なる代替品になるのか否かではなく、Notes/Dominoにできないことで、MOSSで可能になることは何かを考えて欲しいという。昇塚氏は、Notes/Dominoに対してMOSSを含むマイクロソフトプラットフォームの優位性を整理すると次の3点になるという。
1つは、ユーザーの生産性を向上させるためのクライアント環境の提供。2つ目は、ビジネスの確実性を高めるセキュリティ、コンプライアンス対応。そして3つ目が、拡張性、管理性、開発生産性を備えたプラットフォームとしての存在だ。
Exchange ServerもMOSSも、マイクロソフトのテクノロジがベースとしてあり、セキュリティや拡張性などをプラットフォーム全体に提供できるといった部分がNotes/Dominoに対する優位性という。
また、Notes/Dominoは基本的にその内部でのセキュリティで閉じているのに対し、マイクロソフトはActive Directoryという単一の認証基盤の上で、OSをはじめとするさまざまな製品を連携できるため、システム環境を拡張していった場合にも、一枚岩の体制を崩すことなくセキュリティ確保、システム管理を行える点がメリットだとする。
「Notesのバージョン4や5が主流だった時代は、閉じた世界での情報共有でも問題にはならなかったが、現代ではどのようにコラボレーション基盤を拡張していくかが重要。どんな変化にも耐える情報共有基盤をいかに作るかが問われている」(昇塚氏)
コラボレーションのスコープも大きく変化
ITをベースとした仕事環境において、10年前と今とを比較した場合、「コラボレーション」という言葉の定義も大きく変化した。従来は部門の中でファイルやスケジュールを共有することを「コラボレーションと」呼び、それをグループウェアが支援してきたのだが、現在は部門の壁はもちろん、国を超えて他の組織との接点を持つなど、「コラボレーション」のスコープ自体が大きく変化した。共有すべき対象も、ファイルのみならずアプリケーションやデータベース、あるいは人の知識など、多様化している。
また、コンプライアンスに対する認識も変わった。セキュリティを固めるだけではなく、柔軟で可用性が高く、必要に応じて、必要な情報を公開できる透明性の高い情報管理と、それを実施できる組織への変革が求められている。また、コンプライアンスにもTCOが厳しく問われるようになったことも大きな違いだ。
昇塚氏は、「現代の仕事環境の変化を見据えて改良したのがMOSS 2007のコンセプト。Notesはネットワークが不安定でコラボレーションが部門内で閉じていた10年前の環境下での設計から未だに抜け出せていない」と指摘する。