そこで同社は、データセンターの電力消費量とサーバの台数の関係に着目して分析を開始する。具体的には、UNIX系のラックサーバとブレードサーバ、x86系のラックサーバとブレードサーバという4種類のサーバごとの台数を年度別に集計、それに電力消費量を重ね合わせた。それによると2005年から累計のサーバ台数が急カーブで上昇、それに合わせて電力消費量も増加していることが明らかになった。
第一データセンターのサーバの内訳を見ると、その75%以上と圧倒的に多数を占めているのがWindows系である。これは主にアプリケーションサーバとして使われている。つまり、アプリケーションごとに導入してきたため、サーバ台数が年々増加傾向にあり、これがデータセンターの消費電力増加の大きな要因になっていた。
また、UNIX系のサーバについても問題が出てきた。持ち株制への移行で各事業会社からキリンビジネスシステムへ移管されたものが多く、同じ使用目的のサーバがいくつか見られたという。さらに、他のオープン系サーバについても使用業務の減少などで小型マシンへのリプレースが予定されているものがあった。
「データセンターの電力容量不足の要因を分析したところ、複数の事業会社からサーバ資産を移管されたこともあり、x86系のサーバを適用業務ごとに導入していること、そして類似用途のサーバを導入していることが大きな要因となっていることが分かりました」
ここで明らかになったのが、電力消費増加の原因は大きく2つあるということである。アプリケーションごとに増殖してきたx86系サーバと、各事業会社から同社に集中された類似目的のサーバの氾濫だ。そこで、これらの課題を解決することで、電力消費を抑えることができるという結論に達した。
問題解決のために仮想化ソフトを導入
サーバは、性能向上に伴い消費電力が増加する。一方で第一データセンターでは電力容量の制限がある。こうした状況から、ほぼ5年後に使用できる第一データセンターの床面積は現在の現在の3分の2へ減少すると予測された。
そのため同社は、改善目標として4年後までに第一データセンターに設置されているサーバの数、つまり物理的な筐体の数を半減させるという命題を掲げた。単純計算すると年間100台弱のサーバを削減するというものだ。さらに半減させた上で、その後のデータセンターをゼロから構想するというものだ。
「その際、企業の競争力を落とさずに、データセンターでの消費電力を削減することが重要と考えました。ビジネスを止めずに個々のサーバの効率を上げていくということや、余計なコストをかけないということです。それからもうひとつは、電力容量不足を引き起こす原因であるx86系のサーバを適用業務ごとに導入していることや、類似用途のサーバを導入していることを除去して、抜本的な対策を施すことが必要だと考えました」
これらを踏まえて、同社は次のように問題解決の案を策定した。
まず、x86系のサーバを適用業務ごとに導入しているという原因については、「サーバの共同利用の徹底」を図ることにした。そのために、同社ではあらかじめ用意しているサーバを新規の適用業務で利用すること、今後は適用業務個別にサーバを導入しないという方針を立てている。
もうひとつの、類似用途のサーバを導入しているという原因への対策として、「仮想化ソフトでのサーバ統合」という解決策を講じた。すでに導入しているサーバを1つのマシンに統合すること、老朽化して更新が必要となったマシンから統合の対象にしていくという方針にした。
このうち、仮想化ソフトについてはすでに2004年から各社のソフトの評価を開始、2005年から導入に踏み切っている。この仮想化ソフトの導入目的は、3つあった。
ひとつは、サーバの導入費用や保守費用の増加抑止だ。マシンの増加に伴い導入費用や保守費用は増加する一途を辿っており、これらを抑止するというものだ。