シスコシステムズとEMCジャパン、ヴイエムウェアの3社は2月9日、共同で展開する“Virtual Computing Environment(VCE)連合”として日本市場でITインフラストラクチャ製品「Vblock Infrastructure Pakage」の提供を開始したことを発表した。
2009年11月に3社それぞれの米本社が提携してVCE連合を形成したのを受けて、日本市場でも展開する。米市場では、3社の米本社が共同で出資して「Acadia」という企業を設立しているが、日本市場では新たに企業を設立せずに、各日本法人からVblockを構成する製品を用意、Vblock自体は、システムインテグレーター(SIer)をはじめとするパートナー企業から提供される。
Vblockは、3社が提供するサーバやストレージ、仮想化ソフト、ネットワークスイッチなどの製品をパッケージ化、仮想化技術をベースにしたオールインワンシステム。稼働させているデータセンター全体を仮想化したい企業、プライベートクラウドへの移行を検討する企業などを対象にしている。また、クラウドでサービスを提供するサービスプロバイダーもターゲットとしている。
Vblockを構成するのは、シスコのサーバ「Cisco Unified Computing System(UCS)」と仮想ネットワークスイッチ「Cisco Nexus 1000v」、EMCのストレージ、ヴイエムウェアの仮想化関連ソフト群「VMware vSphere」などだ。Vblockは「Vblock 2」「Vblock 1」「Vblock 0」の3つのタイプがある。
Vblock 2は、大企業やサービスプロバイダーを対象に仮想マシン(VM)を3000〜6000台稼働させられるハイエンド向け。800〜3000台のVMが稼働するVblock 1は、中規模のシステム構成。Vblock 2とVblock 1は2月から提供が開始され、小規模システム向けのVblock 0は2010年内の提供が予定されている。
VblockはいずれもUCSとNexus 1000v、vSphereをベースにしているが、タイプによって搭載されるストレージが異なる。Vblock 2に搭載されるストレージは、ハイエンド向けの「EMC Symmetrix V-Max」、Vblock 1はミッドレンジの「EMC CLARiX CX4-480」。Vblock 2とVblock 1には、SANスイッチとして「Cisco MDS」シリーズが搭載される。Vblock 0に搭載されるストレージは「EMC Unified Storage」の予定としている。
無停止で拡張
Vblockは、CPUやメモリといったコンピューティング資源(リソース)やストレージリソースを共通にプールして、自動的に最適化できるようになっている。コンピューティングリソースの自動最適化には、ヴイエムウェアの分散リソーススケジューラ「VMware DRS(Distributed Resource Scheduler)」とヴイエムウェアのライブマイグレーション技術「vMotion」が使われ、ストレージリソースの自動最適化には、EMCの自動階層化機能「FAST(Fully Automated Storage Tiering)」が活用される。
これにシスコのUCSや仮想ネットワークスイッチのNexus 1000vを活用することで、必要とする機能や規模に応じて必要なだけコンピューティングやストレージを拡張できる。Vblockのシステム拡張は、シスコやヴイエムウェアのライブマイグレーション技術の活用で「システムを止めることなく拡張できる」(EMCジャパンの雨堤政昭氏)という。
無停止のシステム拡張が可能というVblockは、ポリシーをベースにしたシステム構成を取れるようになっている。企業の業務で必要とされるコンピューティングパワーや安定性などをサービス品質保証(SLA)で定め、SLAを満たすストレージやサーバ、ファブリック、アプリケーション、OSの構成ポリシーをVblock上でテンプレートとして定義すれば、ポリシーとSLAに従ったコンピューティングパワーを活用できるようになっている。こうしたテンプレートによるポリシーをベースにすることで、「構成エラーや基準に不適合なシステムを削除できるようになり、コンプライアンス対応にも活かせる」(雨堤氏)という。
こうしたことから、Vblockは「ビジネス要件に基づいたポリシーベースのIT基盤」(雨堤氏)と表現される。企業の現業部門などが求めるアプリケーションや稼働時間、エンドユーザー数、ビジネスの継続性、バックアップ体制、セキュリティなどの要件に応じて、いつでもリソースを提供できるとしている。