CEOが「ニコニコ」でCIOは「ハラハラ」、なーんだ?--運用フェーズに入ったクラウドが抱えるいくつかの課題

大河原克行 2010年05月24日 09時30分

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 「2006年8月9日に、GoogleのCEOであるEric Schmidt氏がクラウドコンピューティングという言葉を使ってから約4年。ここ数カ月で、第1波ともいえる波がやってきているともいえる。それはいよいよ、クラウドがシステム運用の段階に入ってきたことを指す」−−日本IBMが5月18日に開催した「Pulse Japan 2010」において、日本IBM専務執行役員、ソフトウェア事業担当の川原均氏はこう切り出した。

 また、先ごろ社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が発表した、日本国内における「企業IT動向調査2010」では、「プライベートクラウドを導入済み」と回答した企業は5%に留まったが、年商1兆円以上の企業では18%が導入済みと回答した。パブリッククラウドにおいては、年商1兆円以上の企業の実に23%が「導入している」と回答したという。この調査結果を見る限り、日本においても大手企業を中心にして、クラウドコンピューティングの導入が促進されていることがうかがえる。

 こうした中、川原氏は企業のクラウド導入にあたって、すでにいくつかの課題が出ていると語る。

 1つ目は、実際にクラウドを導入してみたが、思ったほど経済効率が上がっていないという課題だ。「仮想化だけで終わっており、プロビジョニング、自動化、標準化といった点が進んでいないことが原因」とする。

 2つ目は、コスト削減効果を重視するあまり、オープンソースソフトウェア(OSS)を多用したことによる問題だ。「OSSを多用した結果、管理、運用、セキュリティという観点で課題を残すケースがあるという声を聞いている」という。

 3つ目が、パブリッククラウドとプライベートクラウド、あるいはオンプレミスのシステムとの連携ということになる。「電子メールや開発用システムは、パブリッククラウドを活用したい。また、社内のアプリケーションサービスにはプライベートクラウドを活用したい。だが、これらをどう連携させるかといった点で悩んでいる」とする。

 これらは、クラウドコンピューティングが実際の導入、運用フェーズに入ってきたことで、表面化してきた課題だといえる。

「コストダウン」以上のものが求められる段階へ

 一方、富士通では、5月13日と14日に「富士通フォーラム2010」を開催したが、ここでも、クラウドに関するセミナーに注目が集まった。

 「クラウド環境を支えるストレージ・ソリューション」と題されたセミナーで講師を務めた、富士通ストレージインテグレーション統括部統括部長の熊沢忠志氏は、「クラウドコンピューティングの導入によって、業務の流れや開発スタイルの標準化が進むこと、システムの一括管理でガバナンスが強化されること、さらにコストダウンが図れることといったメリットがある。しかしその一方で、大量データ処理の性能保証、セキュリティ、信頼性の確保といった課題のほか、技術や運用ノウハウに連続性が確保できるのかといった点が課題としてあがっている」と語る。

 そして、同じく富士通フォーラム2010の基調講演に登壇した米Salesforce.com、CEOのMarc Benioff氏は、「すでにクラウドコンピューティングは“Cluod 2”の時代に入ろうとしている。それは、Facebookのようにビジネスアプリケーションが使える時代」と前置きしながら、「クラウドに関しては、多くの人が、信頼性、安全性、可用性といった点を懸念しているが、これに対して、われわれはより高い透明性を提示する必要がある」と、Cloud 2の時代においても課題が継続していることを指摘する。

 また、こうした意見もある。

 富士通社長の山本正己氏は、「私は4月だけで70社のユーザー企業を訪問したが、クラウドの話をすると経営者は“魔法の玉手箱”と認識してニコニコし、隣に座っているCIOは渋い顔をする。富士通は、経営者もCIOもニコニコできるクラウドコンピューティングを提供できる。単にコストダウンが図れるという点ばかりに目をやるのではなく、構築、運用といったノウハウを持っているかどうか、プロダクトからネットワークに至るまでの一気通貫で提供できるのか、これを長年に渡って継続的に提供できるのかといったことが重視されるべき」とする。

 先に挙げたJUASの調査でも、過半数の企業がクラウドコンピューティングのメリットとして「コストダウン効果」を挙げている。ハード、ソフトの購入や導入、保守が不要となり、安価にアプリケーションを利用できるという点がクラウドコンピューティングの特徴と認識する声も多い。だが、その一方で「本当にコストダウンするのかわからない」という声も、6割近くの企業から懸念材料としてあがっている。また、最大の懸念事項として4割の企業があげたのが「セキュリティ対策」が十分であるかどうかという点だ。中には「企業にとっては継続性が最大のポイントであり、サービス提供の死活問題にもなりかねない」との声もある。

 クラウドコンピューティングの認知が高まるにつれ、その導入にあたって重視されるべきは「コスト削減」に加え、「運用時の信頼性」「セキュリティ」であるという機運が少しずつ高まっているようである。

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