前回(今すぐパソコンでできるBI--「Excel」で経営状態を見てみよう)は、一番身近なBIツールとして、決算書やExcelを用いたデータ分析について紹介した。
今回は、状況を把握し次のアクションにつなげるBI、「見える化」あるいは「見せる化」するBIについて見ていこう。
以前、この連載でビジネスインテリジェンス(BI)のアーキテクチャについて説明した(BIツールのカタログ、意味わかりますか?--BIアーキテクチャから学ぶ初歩のBI用語)。BIアーキテクチャは「収集」「変換」「保存」「分析」「表示」といった構成要素に分解できる。それぞれのプロセスにおいて、BIツールは効率良く働き、私たち人間をサポートしてくれる。これらの要素の中から、今回はBIツールの「表示」の働きについて注目してみることにしよう。「表示」の働きは私たちがBIを実践していく上で、とても重要になる。
結果から行動を起こせないBIは無意味
「BIを行う」ということは、自分のこれからの行動を決定するための準備を行うということだ。データを集計、分析した結果をもとに、現在の状況を把握したり、今後を予測したりして、次の一手を考える。BIツールには、人間が現状を把握しやすいよう、結果を「表示」するという役割がある。言い換えれば、今の状況はどうか、何か問題が起こっているのではないか、といったことを「見える化」することができる。
「見える化」の考え方については、早稲田大学大学院商学研究科教授である遠藤功氏の著書「見える化−強い企業をつくる「見える」仕組み」(東洋経済新報社)に詳しい。同氏は、「問題」「状況」「顧客」「智恵」「経営」の5つの見える化によって組織力を高めることができると説明している。また、真の「見える化」を実現するには「見せる化」を推進することが重要だとも述べている。
たとえば、非常に高度な分析を行ったとしても、その結果に基づいて行動を起こせなかったとしたら、何の意味もない。そこで集計結果や分析結果をレポートにしたり、情報共有ポータルになどに掲示したりして、重要な知見をみんなで共有できるようにする。つまり「見せる化」の工夫が必要となる。そのときに便利に使えるのが「表示」ツールだ。
表示ツールの技術は年々進歩し、グラフィカルで、初心者でも見たいデータへ直感的にたどり着けるものが多くなった。データベースやスプレッドシート(表計算ソフトのファイル)からデータを取り込み、グラフやチャートにして表示するといったことは表示ツールの得意技だ。
また、マウス操作でデータを入れ替えて(分析軸を変えて)、その変化を見るといったことも簡単にできる。簡単な分析なら、分析アルゴリズムを詳しく知らない現場の担当者が、自分のデスクトップ上で行ってしまうことも可能だ。そのため、数あるBIツールの中でも表示ツールの人気は高く、ユーザーも多い。